HE規格で「ETRTO 40-305」の物を使う必要がある。何の話かというと、STRiDA LT 16インチに使えるタイヤの話である。16インチのいわゆる小径自転車というものは街中でよく見かける割には、この規格に合った交換用タイヤを探すとなると、その選択肢は信じられないくらいに少ないのが現状である。
このETRTOという規格を簡単に説明すると、「○○-□□□」という表記の前半が幅(mm)を表し、後半がリム径(mm)を表しているので、例えば「ETRTO 40-305」の場合、タイヤの幅が40mmでリム径が305mmのタイヤということになり、インチ表記では「HE規格の16×1.50」のタイヤを指す。つまり、メーカーが異なっていても「ETRTO 40-305」のタイヤならどれも基本的には同じ設計思想で製造されているから互換性があるということになる。また、リム径(ホイールとタイヤの接点円周の直径)は、ここが違うと互換性が無くなるので特に注目すべき数値である。
STRiDA LTを新車で購入すると搭載されているのは「ETRTO 40-305」のタイヤなので、交換する場合にも基本的にはこれと同じ規格のものと換装すればよいのだが、長年STRiDAを乗ってきて分かったことは、この自転車は経年によって全体的に歪みが生じるということである。
歪みの生じ方は乗り方のクセなどにも依るのだろうが、特に後輪側でタイヤとベルトの干渉が生じるような歪み方で表れることが多いように思う。これは、STRiDAの設計が左右非対称であることによって左右方向にねじれる形で力が加わり続けることに関係していると思われる。つまり、新車ではETRTO 40-305の40mm幅のタイヤで問題無いのに、数年乗っているうちに全体に歪みが生じて、幅40mmのタイヤではベルトに干渉して異音が発生するようになってくることもある。
現在、私が乗っている4代目のSTRiDA LTは3年余り乗っているのだがまさにその状態に陥った。
先日、後輪タイヤに使っていた《KENDA K193 TR-KD-018》が擦り減って内部の繊維が見え始めていたので同じETRTO 40-305規格の《ギザプロダクツ C-1959》というタイヤに交換してから、この異音症状が強く現れるようになった。
この問題に対処するには、ベルトからタイヤを遠ざける必要があるのだが、STRiDAはそんな細やかな調整ができる構造になっている自転車ではないため、唯一の対処方法は「幅の細いタイヤに替える」ということになる。ETRTOの表記で言うと、後半部分のリム径はホイールに対して固定なので数値が異なるタイヤは使えないが、タイヤ幅を表す前半部分の数値は多少上下したものでも使えることが多い。しかしこういう時、市場に出回っているタイヤの種類が少ないというのは困りものだ。
ETRTO 40-305のタイヤは16インチ自転車用のタイヤとしては一番多く出回っているように思うが、それよりも細いものとなると「ETRTO 37-305」や「ETRTO 32-305」ということになってくるのだが、これがなかなか見つからない。ネットで扱っているショップを見つけても「在庫無し」になっていて注文できなかったり、足元を見ているのか異常に高値だったりすることも多いため、タイミングによっては1本も見つけられないこともある。
そんな中、ETRTO 32-305 (HE 16×1.35)の《KENDA KSMART K1085》の2本セットを入手できたので、症状を改善するべく早速交換してみた。なお「40-305」から「32-305」に交換するとタイヤ幅が8mm狭くなることにより、単純計算ではベルトとタイヤの距離が現状よりも4mm離れるので、1mmほど接触している現状を打破できるはずだと考えて実行した。
STRiDAのタイヤは前後共に片持ち構造であるため、チューブやタイヤの交換は非常に簡単で、パンクした時にもササッと対処できる点には、日頃から助けられている。この点は、STRiDAの素晴らしい特徴のひとつとして挙げてもよいだろう。
結果は計算通りで、ベルトとタイヤの間に2~3mmの空間が確保できるようになり、走行中に擦れることによる異音ももちろん発生しなくなった。今後は、後輪のタイヤ交換にはETRTO 40-305のタイヤは使わないように注意しなくてはならない。
ちなみに、この症状はタイヤとの干渉部分が無い前輪には発生しないので、前輪用のタイヤとしては幅32~47mmくらいまでのものが適用できるが、ETRTO 47-305で幅47mmのタイヤ《Shinko SR076 16 x 1.75》の場合、STRiDA特有の折り畳み時の前後の車輪同士のマグネット接続がしにくくなった実体験があるので、頻繁に折り畳む使い方をしているSTRiDAユーザーにはお薦めしない。
今回購入して付け替えた《KENDA KSMART K1085》は、タイヤ表面のトレッドパターンが凹凸になっていないスリックタイプなのだが、スピードを出さない街乗りメインの私はできれば多少の凹凸のあるタイヤの方が濡れた路面などでも安心して乗れる。その点では以前使ったことのあるETRTO 37-305の《DURO DB-7034 Sierra》はセミスリックタイプで価格の割に耐久性もあって良かったことを記憶している。けれど、このタイヤも現在では入手が困難になっている様子。
こうも選択肢が少ないとタイヤの好みを通すのも、色々なタイヤに交換して試すのも難しいため、もう少し安定して選択肢が増えてくれたら愉しいのになぁ、と長年感じているのである。