kishin 貴真

20190130

  /  ART

絵画の画面強度

川本絵美 作品展〈むすんでひらく〉

小さなギャラリーで催される“個展”というスタイルは、一作家の感性だけを集中的に堪能できる機会としてとても興味深い。先日は、gallery Gで開催されている川本絵美氏の作品展〈むすんでひらく〉を観てきた。

この作家は写実的な表現技術を高いレベルで持っている。大抵の場合、その身につけた高い技術に今度は束縛されるかたちで、写実以外の表現に手を出せなくなるケースが多いのだが、川本氏の場合には、そこから先に足を踏み入れる勇気を持っている稀有なタイプで、作品を観させていただく機会がある度に「本物だなぁ」と感心させられる。

gallery Gは、広々とした1階+2階に小さなロフトという構造になっているホワイトキューブで、今回の展では、1階に6点、ロフトに小品7点の、計13点の作品が展示されていた。当然の事ながら、このギャラリーで展を行う作家は、1階に自信作や大作を展示し、2階ロフトには小品や参考出品的な作品を展示する場合が殆どである。

今回の展でもおそらくはその考えに基づいての展示配分をしているのだろうが、個人的にはロフトに展示されていた〈雨〉〈瞼の裏〉〈夢〉という3作品が特に興味深く、気づけば1時間近くも見入ってしまった。

常々感じる事だが、絵画作品には固有の“画面強度”があると思われる。

これは、観者の視線のエネルギーに対して耐えうる度合いというもので、画面強度の低い作品は、2〜3分も観ていると敢え無く像が崩壊してしまうため、本物かまがい物かを見極める手がかりとして重要視している。無論、この「強度」というものは物理的な強さではない。従って、絵の具をただ闇雲に厚塗りにすれば強度が高くなるということではなく、もっと感性的なものである為、いくらテクニックだけを磨いても高い画面強度は構築できないのである。

その点に於いて、川本氏の作品は非常に画面強度が高いと感じている。

特に前述の〈瞼の裏〉という作品は素晴らしかった。じっと見つめていると、像が崩壊するどころか逆に世界が発展していき、光…というよりも熱を帯びていき、やがてはその向こう側の形而上の世界へとつながていくのを感じられる。こうした感覚を得られる作品に出逢えるのは、数十年や数百年も生き延びてきた巨匠たちの作品では珍しくはないのだが、近代の若い作家によるものとしては稀であると云えるだろう。

今の時代、個展を開催するというのはその気になれば誰でもが行えるため、故に玉石混淆となってしまうのは必定である。そうした点からも、短い期間ではあるが優れた作品を鑑賞できる貴重な機会を逃さず、是非多くの人々に足を運んでもらいたいと思える豊かな展であった。そして、今後の川本氏の発展にも期待している。

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