20260123

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幕を閉じる映画館

近くにあってとても便利だった映画館《ユナイテッド・シネマ フジグラン今治》が今月末で閉館する。映画館が入っているショッピングモール施設の敷地契約満了による閉鎖の影響で映画館ごと丸っと無くなってしまうということらしい。

日本各地に点在するいわゆる単館系の映画館が時代の流れの中で無くなってしまうという話はよく耳にするものだが、シネコン系の映画館でも無くなったりするものなのだと、ちょっと不思議な感じがしている。

残りの営業も僅かだが、観たいと思っていた映画《モディリアーニ!》が公開されたので、いつものようにネットでチケットを予約してから平日の午後に観に行った。

ちなみに明日は、1920年1月24日に夭折したアメデオ・モディリアーニの命日である。この映画はその4年前の1916年を描いたものである。

到着した館内は閑散としているが、この感じはいつもの平日の感じであって閉館が近いからということでもないだろう。私は平日の映画館のこのざわついていない穏やかな雰囲気は嫌いじゃない。

スクリーン入場前にはもちろんコンセッションでポップコーンとドリンクを購入するのだが、ポップコーンはキャラメル味、ドリンクはメロンソーダと決めている。この2つはどちらも映画館以外ではまず口にすることのないものなので、これをゲットすると「あぁ~映画館に来たなぁ」という軽い高揚感を味わえるのも劇場での映画鑑賞というイベントの一環だと思って毎回愉しんでいる。

シネマコンプレックスという商業システムがまだ日本に今ほどには普及していなかった頃から映画館には時々足を運んでいたのだが、それら旧式の映画館とシネコンとの一番の印象の違いは、複数スクリーンの入口がちょっと暗めの通路にまとまっているこのポップな迷宮感なんだよなぁ、と毎回訪れるたびに思う。

来館者をワクワクさせる仕組みとしてとても効果的に機能しているのを感じる一方で、どこのシネコンに行っても “同じ顔” をしているために、各地の単館系映画館で感じるような親しみやすさというか人間味のようなものが無いアンドロイドのような作り物感満載の不気味さをも感じることを含めて、シネコンでの映画鑑賞体験はちょっとしたファンタジーなのだ。映画というフィクションの世界への導入演出としてそれは決して悪いことではない。

まだ誰もいない4番スクリーンに入ってF10番シートを見つけて、コートを脱いでから着席する。スマホの電源をOFFにしたら甘いポップコーンをつまみながら流れている予告編に見るでもなしに視線を向けて本編が始まるのをゆったりとした心持ちで待つ。東京などの栄えている都市部では平日でもそれなりに客数がいるものだが、地方では4~5人なんてことも珍しくはなく、ほぼ貸切状態で大スクリーンでの映画鑑賞が叶うのは地方在住ならではの特権だろう。

今回観た《モディリアーニ!》は登場キャラクターの数がコンパクトにまとめられすぎていて、もうちょっとエコール・ド・パリ周辺の芸術家との絡みがある展開を期待していたので、そこは残念だった。同じ題材の映画ならアンディ・ガルシア主演の《モディリアーニ 真実の愛》の方が印象的だったように思う。しかし、モディリアーニとガニャの “決闘” とも云える掛け合いのシーンは惹き込まれた。

この映画館の幕が閉じるまであと数日だが、もう一度くらいは時間をとって行けそうなので、最後に鑑賞する作品は何が良いだろうかと考えている。『映画館』という現実とファンタジーの狭間を存分に堪能するなら、まさに壮大な作り話を描いている《落下の王国》なんてうってつけかもしれない。

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