kishin 貴真

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20240614

/ART

知らない街で展示される

©Casie

作品を預かってもらっているアートのサブスク《Casie》から、京都は清水五条のとあるカフェで作品の展示が始まりましたというお知らせをいただいた。

Casieが展開している《KYOTO ART BREW》というプロジェクトでは、京都各所のカフェの協力のもと、Casieに登録されている作品の中からカフェの雰囲気に合った作品をキュレーション・展示しているようで、その展示替えの作品の1点として選んでいただけたらしい。

鴨川を一望できるカフェ《Cinq Neuf》。

鴨川に向かって窓のひらけた開放的で明るいカフェのようだ。このカフェの窓辺に選ばれたのは、VOIDISMシリーズの〈06 MAR 24〉という60cm程度の作品で、サンドカラーと紫煙のような淡く漂う空気感が束の間、想いを遠く静かな場所へと優しく連れ去ってくれるような心地よさがあり、今年仕上がった作品の中でも特に気に入っている作品である。

Casieでは、自分の作品がレンタルされたり販売されても、その相手の個人情報は作家には伝えられない。だから、こうして期間限定であっても展示作品のひとつとして選んでいただき、自分の知らない街のどこかの壁に自分の作品が掛けられている光景を見られるのはとても嬉しいし、それ以上に不思議な感覚にとらわれる。

自分の家や、自分で運んだ場所に掛けられている作品を見る時とは違う感覚。
自分という存在とは全く交わらない文脈でその場所が選ばれ、運ばれ、辿り着いて壁に掛けられている作品が、かつては自分の指で持った筆によって描かれたという確かにあるはずの事実が、今この瞬間に作品が置かれている状況とリンクしにくい不思議な感覚が愉しい。

あの子は何故そのカフェに居るのだろう?

その感覚を味わうために近場のカフェであれば覗きに行きたいところではあるが、広島から京都へは、ふらりとカフェ巡りに訪れるには少々距離があるので、展示をこっそりと覗きに行く任務は京都在住の名も知らぬ誰かに委ねることにしよう。

《VOIDISM》シリーズは相変わらず並行して数点を制作しているが、今はそれらと並行して《輪郭の崩壊および拡張》シリーズの三部作にも取り組んでいる。

完成するのはまだ先になりそうだが、完成してしばらくは自室に飾って堪能した後で、頃合いを見てCasieに作品登録申請をしてみたいと思う。そして、いつの日にかまた私の知らない街のどこかの壁に掛けられたこの三部作の様子を遠くから見ることができたらと想像すると、まだ完成してもいないし手元にある作品の事なのにちょっとワクワクしてしまう。

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