
M42マウントのオールドレンズを愛用して久しい。広角側は28mmを数本所有しているのだが、もうちょっと広角が欲しいと感じることがあったため20mmレンズをいつか入手しようと考えていたものの、そもそも1970年代の超広角レンズの玉数はそう多くはないため、なかなかコレという1本に出会えずにいた。
先日、その機会が急に訪れて、若干のコンディションの不安がある個体ではあったものの相場よりもかなり安価なこともあってすぐに入手したのが、かなり希少なモデル《Vivitar AUTO WIDE-ANGLE 20mm F3.8》である。もちろんM42マウントだ。
私は、FUJIFILM X-E1で中一光学のフォーカルレデューサー《Lens Turbo Ⅱ》を使用しているので、20mmレンズを使用して撮影した場合の画角は 20mm x 1.5 x 0.726 ≒ 22mm の画角での撮影となる。28mmレンズの場合には約30mmの画角なので、それに比べるとかなり広々とした印象になる。

安価な理由として「後玉に若干の曇りアリ」という状態だった。実物を確認すると確かに曇りがあり、この曇りはおそらくは以前のオーナーが不適切な溶剤か何かで拭いたために発生したもので、残念ながら分解クリーニングしても完全には除去できないものであったのだが、致命的で使用不可というほどのものでもなく、撮影環境として強い光が大量にレンズに射し込むようなシチュエーションでなければ悪影響の出ない程度のものであったのは幸いだった。
所有するM42レンズはいつの間にか20本以上にまで増えているのだが、いまだに新しいレンズを手にすると初めての1本の時と変わらずにワクワクする。早速、FUJIFILM X-E1とVivitar 20mmだけを持ってテスト撮影をしに屋外に出てみた。

超広角なので周辺が荒れるのは仕方ないと思っていたが、想像していたよりもずっと破綻は少なくて、特に不自然な歪みが無い点はとても優秀だと思う。また、中心部の解像度が十分に高いことにも驚いた。このレンズは色乗りが浅いという情報も目にしていたのだが、X-E1で撮影した限りでは逆にかなり鮮やかで少々扱いに困るほどの彩度が出ている。

このVivitar 20mmの特徴は超広角という点ともうひとつ、非常に寄れるという点がある。スペック上の最短撮影距離は0.16mとなっていて、レンズ先端からだと5~6cmまで寄れてしまうため、光源の方向によってはレンズやカメラの影が被写体にかぶってしまうほどである。


マクロ的な使い方ができるという点が実に面白く、単に超広角で広々とした風景を切り取るという使い方よりは、手前の被写体とその奥にある空間との構図の妙を楽しむ方がこのレンズの特性を活かす使い方のように感じられる。

カラスがベンチに忘れていった私物もこんな風にダイナミックに撮影することができる。大きく写ってはいるがこの羽は9cmほどの長さしかないものだった。それでも最短撮影距離まで寄ると良い被写体になる。


中心部の解像度やピント面のシャープネスは十分に高く、周辺の流れは多少あるものの許容範囲で不自然な歪みは特に感じられない。色乗りやコントラストも良好。玉数が少ないことや市場に出ていても相場よりも高額過ぎる値付けになっていることが多い状況もあり興味を持ったとしても容易に入手できるレンズではないのだが、オールドレンズユーザーならチャンスがあれば手にしておいても損はない面白い1本だと云えるだろう。
前玉が大きく広がるような形状でフィルター径が82mmなので決してコンパクトとは言えないが、それでも超広角と近接撮影の二つの特徴を持ったレンズによる肉眼では得られない独特な構図での撮影を愉しめるなら、出かけるときに持ち出すレンズの候補として挙がることが多くなりそうだと予感している。