kishin 貴真

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20240205

/ART

額縁にケブラー紐を

額縁を吊り下げるために背面に使用する紐については、今までは額縁に付属してきた紐や手元にあった丈夫そうな紐などを特にこだわりも無く適当に使用していたのだが、今後はケブラー紐に統一してみることにした。

ケブラーとは合成繊維素材で正式名称はポリパラフェニレン テレフタルアミドというらしい。簡単に言ってしまえば「耐熱性・耐寒性に優れ伸びが小さく引張強度がステンレスよりも高く錆びたりもしない」という性質を持った素材で、それを丸紐状に加工したものがケブラー紐である。特徴を見ても明白だが、額縁に使われる紐のように長期間に渡って引っ張られ続けるような用途には正にうってつけの素材と云える。

数mで切り売りされているものは単位価格が高く付くので、ある程度の長さのロールで販売されているものを入手することにした。ケブラー紐には太さも色々とラインナップがあるが、私の用途を考えて、φ1mm x 31mの商品と、φ1.5mm x 31mの商品を入手して使うことにした。

ちなみに、注文して到着したφ1mmの商品はリールが完全に崩壊した状態で到着した。さすが安定のMade in China品質である。ちょっとヒビが入っているとかではなく、ここまで完全に壊れていると逆に清々しい。

当然だが、紐の太さによって耐荷重が変わってくる。φ1mmのものは強度46kgで、安全に使用できるのはその30%程度の重さまでと言われているので、14kg位の額縁に使用できる。カンヴァスの木枠に直接ヒートンを打って使用する場合や、小さい額縁~中程度の大きさの額縁にはこのφ1mmのケブラー紐で十分対応可能だ。

ちょっと大きめで重さのある額縁用としてφ1.5mmで強度110kgのケブラー紐も入手した。30%だと33kgでも耐えられる計算になる為、私が扱う範囲の額縁ならこれで十分すぎる強度を確保できることになる。

額縁背面での紐の結び方にはいくつか種類があるようだが、私は最もシンプルで手間のかからない方法を採用している。その方法を簡単に説明してみる。

まず、用意する紐の長さだが、紐を通す左右の板吊りやヒートンの距離の2倍+15cmが過不足無くちょうど良い長さだと考えている。この長さで紐をカットして準備する。

紐を2つ折りにして、折った側を片方の板吊りに通して輪をつくり、紐の両端を長さを揃えた状態でその輪に通して引っ張って固定する。これで片側の固定が完了。

次は、反対側の板吊りに両端を通してから、板吊りを巻き込むように2本一緒に普通に結び、さらに解けにくくするためにもう一回普通に結ぶ。これで完了だ。結び終わった状態では紐の両端が4~5cmだけになるはずなので、これが額縁の設置の邪魔になったり、額縁の側面から出てしまったりすることはないだろう。

ケブラー紐は強く引っ張ってもほぼ伸びないので、額縁の位置決めや左右のバランスの調整などの設置作業も非常にしやすいという印象を受ける。唯一の難点は、とても丈夫であるが故に “切断しにくい” という点だろう。

ハサミでも切れないことはないが、何度もガシガシやってようやく切れるという感じなので、切断面はバラけるしゴワゴワになる。そうなってしまうと、後工程でヒートンに通したりするのもやりにくいのでバラけずにスパッと切断できる方法が欲しくなる。

そこで大活躍するのがHOZANの《ワイヤーカッター C-217》である。以前もこのブログで紹介したことがあるのだが、編み込みワイヤーを美しくカットしてくれる優れた工具なのだが、ケブラー紐に対しても有効だったので、ハサミでの切断との比較を見てもらいたい。

説明するまでもなく、HOZANのワイヤーカッターがいかに優れているかお分かりいただけるだろう。ケブラー紐を扱うのなら工具箱に入れておいて損はないアイテムである。ちなみに、C-217にはN-16というブルーの姉妹品も存在する。メーカーによるとグリップ部分の素材が異なる仕様なだけで、刃の部分の性能はC-217とN-16は同等らしいので、見た目の好みや販売価格で選択してもよい。

背面でケブラー紐を結ばれた絵画作品は、自分の家に飾られるものもあれば、手元を離れて旅に出ていくものもある。しかしどこにいても十分な強度が約束されていれば、安心の中で気持ちよく飾ってもらえるに違いない。

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