kishin 貴真

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20160821

/DESIGNOTHERS

Beoplay H5 印象

Beoplay H5

amazonで早めに予約しておいたBang&Olufsenの新作イヤフォン『Beoplay H5』が発売日の翌日に到着した。発表されてから待ちに待った商品が手元に届くのは幾つになってもワクワクする。

パッケージはB&Oらしく素敵で、蓋を開けるとまず静かにH5本体がお目見えする。そのトレイを上げて内部を覗くと、チャージングキューブ、小さなキャリングポーチ、7サイズのイヤーピース、コードクリップ3個、説明書が収められている。説明書は各国語で記載されており、簡潔な文章とイラストで説明している。この一冊で全世界向けという訳だが、複雑な操作も特に無いので必要十分だろう。

まずは、自分の耳に合うイヤーピースのサイズを見極めることから始める必要がある。
特に耳の穴に押し込むタイプのインイヤー型イヤフォンでは、イヤーピースがしっかりとフィットしているのといないのとでは、聞こえる音に多大な違いがあるため、この見極めは非常に重要となる。

全サイズを試した結果、元々本体に付いていたMサイズのシリコンタイプで良かった。

iPhone5sとBluetooth接続し、音楽を聴いてみる。緊張の瞬間だ。

ファーストインプレッションとしては、高音が不自然に硬く潰れていて、中音はくもり、低音はべったりとヌケが悪く、全体的に非常にレベルの低い音質となっていた。3万円近いイヤフォンなのである程度の音質は保証されるだろうとたかをくくり、試聴もせずに購入してしまったことに後悔する。

「これがBluetoothの限界かぁ…」と涙目のまま気絶しかけたところで、ふと思い出した。

しばらくの間、オーディオ製品を購入していなかったため忘れていたのだが、音を鳴らす装置の場合には、エージングが必要であった。製造されたままの状態では本来の鳴りは期待できず、数十時間慣らした後に、ようやく本領を発揮する。エージング、それは鳴らす装置のための儀式であるのだ。

「音が良くなりますように」と願いを込めて、とりあえずはフル充電で3回分、Ludwig、Piazzolla、SCHAFTの楽曲を使って、15時間前後のエイジングを行ってみた。

結果は良好で、B&Oらしい素直でクリアなサウンドが姿を現した。

H3で感じたものとは違い、H5は全体的にまとまりのあるギッシリと実が詰まったような音を聴かせてくれる。低音も十分に感じられ、B&Oプロダクトではよく言われる「低音不足」に、H5は程よく対応しているように思われる。私としては購入して良かったと思える音に仕上がっている。

エイジングは不十分なのでもう少し時間をかけて行っていく必要があるが、まずはH5が問題の無い音質性能を持っていることが確認できてホッとした。

次に試したのは、専用App『Beoplay』による、DSPプリセットの調整。
このAppを使うと、TONETOUCHというシンプルなインターフェースで音質を調整できる。重く・薄く・柔らかく・硬くといった方向でリアルタイムに音質調整できるのは楽しい。これ自体は良いアイディアだと感じた。

しかし、DSPプリセットを変えるとどうにも音が不自然になる傾向がある。

おそらくは処理性能の問題なのだろう。DSPプリセットを変えると『Beoplay』や『Music』といったAppだけではなく、全Appの音質に影響を与えることからも分かるように、プリセットした音質への変換処理はiPhoneではなくH5本体で行っていると思われるが、この処理をできるだけスピーディに行うために全音域で丁寧に処理するのではなく、必要最低限の簡易的な処理をすることで音の遅延や途切れができるだけ発生しないようにしているのではないかと推測している。そのため、処理後にミックスダウンされたサウンドデータ的にはどうしても不自然な状態に甘んじることになっているのではないだろうか。とはいえ、全く使えないということもなく、微調整程度の変化のさせ方ならさほど気になるような不自然さは感じられないので、自分としての許容範囲を考えながら使うには楽しいAppだろう。

この点に関しては、将来的にはDSPに使われるチップの処理性能が向上すれば、それに比例して実質的な使い勝手も良くなるだろうから、今は初期のテスト段階と捉えて温かい目で見守ってみたい。

Beoplay リモコン

一点だけ、プロダクトデザイン的に残念な部分がある。
それは、リモコン形状。

愛用しているBeoplay H6にも同じような形状のリモコンが付いているのだが、使ってみるとその明確な違いが分かる。どちらのリモコンも3ボタン仕様で、目で見ずに指先で触ってボタンの位置を識別できるような凸形状が施されている。問題は、この凸形状の扱い方に違いがあるということである。

H6では、3ボタンの境界部分に凸形状が施されているため、凸形状の無い平らな部分を押すことになる。対してH5では、ボタンの真上に凸形状が施されているため、凸形状自体を押すことになる。同一メーカーでこの仕様の違いは避けて欲しかった。H6を使い慣れているため、H5でもつい凸形状が無い部分を押してしまうのだが、それだと当然機能せず「あっ、そうだ違うんだ」と操作し直すことが度々ある。

リモコンのこの形状変更は操作性の改善を目的としているだろうことは想像がつくので非難はできないのだが、慣れるまではまだまだ間違えそうだ。H5のリモコンと同じ仕様のリモコンが付いたH6専用コードが別売りで登場したらこっそり入手してしまいそうだ。

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まだまだ使い始めて間も無いBeoplay H5だが、物としての質感も良く、音質にも満足している。音質に関しては、エージングを進めることでもうちょっと良くなるだろうし、なにより、iPhoneとのケーブル接続という煩わしさが無くなったことが嬉しい。マグネットをくっつけると自動的にOFFになる機能も使い勝手が良くて気に入っている。

最初に音を聴いた時には本当にショックだったが、今はオススメできるBluetoothイヤフォンとして名を挙げても良いだろうと実感している。これからは、冬場はBeoplay H6、夏場や荷物を少なくしたい時にはBeoplay H5という使い分けでB&Oサウンドを楽しんでいけそうだ。

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