20251021

/ART

色が揺れない リキテックス プライム

油絵具の使用と並行してアクリル絵具も使い始めた頃、とても困惑した。製法も原材料も異なる絵具なのでいろいろな点で油絵具とは性質や扱い方が違うのは当然なのだが、その中でも如何ともし難かったのが、アクリル絵具は塗っている時の色と乾燥した後の色とでは印象が大きく変わってしまうという点である。

制作していて「よし、今日はここまで」として、次のタイミングで作業を再開しようと画面の色を確認すると、記憶していた色とは異なる色がそこにはあって「???」となってしまう。もしかすると、絵画制作をアクリル絵具からスタートしている人にとっては当たり前のことで、その変化を前提として乾燥後の色を正確にイメージしながら描くことができるのかもしれないが、油絵具の “色の変わらなさ” が感覚として身についてしまっていると「アクリル絵具での制作は無理かも‥」となって敬遠していた。

そうして結局は油絵具で制作しつつも、時々思い出しては様々なメーカーのアクリル絵具を購入して試してみたり、併用するメディウムを色々と変えてみたりと模索している中で出会ったのが《リキテックス プライム》シリーズのアクリル絵具だ。

リキテックス プライムを初めて使った時の印象は「なぁんだ、あるじゃん」という拍子抜けするような感じ。あれこれ色々と試して半ば諦めかけていたのに、突然求めていたものを発見してしまった拍子抜け感。使用時と乾燥時の色の変化を感じさせないアクリル絵具『リキテックス プライム』との出会いであっさりと問題は解決した。

一般的なアクリル絵具が乳白色の樹脂をベースに使って製造されていることに比べて、リキテックス プライムは透明樹脂を使って製造されている。その結果、使用時と乾燥時の色の変化を感じさせないという理屈も明解でしっくりくる。

また、この樹脂色の違いは混色時にも大いに影響しているように思われる。リキテックス プライムを使う以前に他のアクリル絵具を試していた時には、混色で色を作ろうとしてもどうにも思い描いた色に整ってくれないということが多々あった。単純に自分の経験不足のせいだろうと思っていたのだが、リキテックス プライムを使い始めてからはそれがなくなり、油絵具を扱っている時と同じ感覚で混色によって欲しい色に整えることが容易になった。これはリキテックス プライムの顔料濃度の高さも影響しているように思われるが、何にせよ、ようやく作品制作にアクリル絵具を使うことができるようになった。

なお、リキテックス プライムはチューブに貼られているラベルの仕様も気に入っている。

実際の絵具が塗られているカラーサンプルは色選びに最適。また、透明度表記も分かりやすい。透明/半透明/半不透明/不透明の4タイプがあるが、混色の際にはこの特性を考慮することは結構重要なので、ここが分かりやすいのはとても助かる。

Voidism〈21 SEP 25〉acrylic on wood

最近、様々な理由から制作に使用する画材や用法などを一から見つめ直したりしているのだが、その中でリキテックス プライムの存在は大きい。制作している時の色がある程度保証されることでストレスなく安心して画面と向き合えるというのはとても重要である。このことで、今では油絵具とアクリル絵具の使用頻度が半々ほどになっており、更に今後は完全乾燥時間の短さという利点からアクリル絵具へと傾倒していく可能性もあるが、それはリキテックス プライムなくしては成立し得ない話である。

良い画材を使えば良い作品が出来るという訳では勿論ないのだが、リキテックス プライムは上述のように制作時のストレスから解放してくれる素晴らしいアクリル絵具だとオススメしておきたい。

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