kishin 貴真

20221129

/PHOTOGRAPHTHINK

Fujinon問題にどう対処する?

1978年にFUJI PHOTO FILM CO.が発売したフィルム一眼レフカメラ《FUJICA》に搭載されていたM42マウントの単焦点標準レンズ《FUJINON 55mm F1.6》という、現在では流通数が極めて少ないレンズがあるのだが、SNSで見た作例の描写がとても好みだったので、探しに探しているうちにFUJICA ST605Ⅱとセットの物を運良く入手することができた。
※流通量が多いEBC X-FUJINON 55mm F1.6とは別のレンズ。

FujinonレンズのM42マウントタイプでは、FUJICAフィルム一眼カメラで開放測光を実現するための機構として、絞り環の一部にマウント側に向かってごく小さな突起があり、これが原因で2つの問題が発生する。①マウントアダプターに正しく最後まで捩じ込むことができずに無限遠が出ない状態となる。②可能な限り捩じ込むことで絞り環が圧迫/固定されてしまい、絞りを変更できなくなる。この2つの問題、いわゆる “Fujinon問題” があるのだが、FUJINON 55mm F1.6も例外ではない。

ミラーレス一眼でマウントアダプターを介してFujinonレンズを使う場合、このFujinon問題への対処の方法は主に3パターン考えられる。

最もスマートなのは、この問題に考慮した設計となっているマウントアダプターを選択して使うことだが、すでにマウントアダプターを持っている場合や、特定メーカーのフォーカルレデューサーを使いたい場合には、このパターンを選択するのは難しい。このためだけに買い増ししたり、メーカーが対応版を開発・発売するのを待つ必要があるからだ。

2つ目のパターンは、レンズにある問題の突起部分を削ってしまう方法である。
突起は数mmの小さなものなので小型の金ヤスリでも使えば簡単に切削できてしまうのだが、当然、不可逆な処理となるので元には戻せない。

3つ目としては、マウントアダプター側の突起が干渉する箇所を削る方法である。
このパターンであれば、レンズの方は加工せずに元の状態で保持できるし、別のFujinonレンズを入手した場合でも問題なく使えるようになる。

ネットでこの問題への対応を調べてみると、かなり多くの人がレンズの突起を削って使用していることが分かる。加工としては最も手間がかからないからだろう。しかし、一方でこうした不可逆な加工に対して「ジャンクレンズにしてしまっている!」という批判的なコメントをしている人もいる。FUJICAのフィルム一眼でしか機能しない過去の遺産ともいえる数mmの突起を削っただけでジャンク化呼ばわりする、そうした少々神経質すぎる “コレクター魂” みたいなものには全く賛同できないが、選択肢として可能であれば、希少なレンズに対しては不可逆な加工ではない対処をできるだけ選んであげたいと思い、私の場合には希少でも何でもない現行品のマウントアダプター側を削ることにした。

マウントアダプターと云っても、私の場合は使用している中一光学のフォーカルレデューサー《Lens Turbo Ⅱ (M42‐FX)》である。これは、レデューサーレンズを内蔵した鏡胴部とM42スクリュー部とに分解できるので、まずはM42スクリューを外して、加工時にヤスリの先端や削った金属粉で内蔵レンズを傷つけないように保護してから、問題の突起が干渉する箇所を慎重に確認しながら細い金ヤスリで切削した。

その後、M42スクリュー部品のフチも微妙に干渉するため、こちらも面取り程度に削った。

金ヤスリで削った後はガサガサなので、目の細かい紙ヤスリで滑らかにしてから、仕上げとして、金属の地色が出てしまったところは黒のBRITE-MARKで塗装して黒に戻した。

結果は上々で、突起のあるFUJINON 55mm F1.6を最後まで捩じ込めるようになり、絞り環もF1.6~F16までひっかかりもなく軽快に回すことができるようになった。もちろん、Fujinon以外のM42マウントのレンズに対しても何ら影響の無い加工となっている。

FUJIFILM X-E1:Lens Turbo Ⅱ+FUJI PHOTO FILM FUJINON 55mm F1.6:ISO200 f2 1/2000

本来であれば、マウントアダプターやフォーカルレデューサーのメーカー側でこうした問題を認識して、回避できる設計にしてもらいたいところだが、ユーザー側で自分の使う道具を使い易いように考えながらカスタマイズするというのも、私としては愉しい体験なので良しとしたい。

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