kishin 貴真

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20220807

/ARTTHINK

時の流れはゆるやかで

暑くなりそうな日、まだ気温が上がりきってしまう前に出掛けて用を済ませて、帰宅する。
陽の明るい休日の少しゆっくりとした時の流れが心地よい。こんな日はせわしなく動くよりも心を身体をととのえるように静かにすごすのがいい。

窓辺で柔らかい光を浴びながら今日もほんの少しだけ成長する者たちも機嫌が良さそうだ。
部屋の中に息づくものが居る感覚は良いものである。

制作中の塑像に少し手を加えたところで緊張感はあえなく途切れ、今日はこのくらいで良いだろうと早々に切り上げる。「作品作りで最も難しいのは、作品自体をどうするかではなく、創作する高い精神状態にもっていきその状態を保つことこそ難しい。」と云った巨匠は誰であったかは忘れたが、全くもって同意する。

窓辺のティランジアたちの隣に腰をおろして陽光をお裾分けしてもらいながら、どっしりと分厚い画集を広げてのんびりとした気分で感性の扉を軽くノックするつもりが、気づいてみると熱心に読み込んでいたりする。テキトーも真剣もまぜこぜになって、それでも全体として肩の力が抜けた居心地の良さを感じるこうした瞬間は、平日にはどうしてなかなか手に入れ難いものである。

穏やかな時、最近よく流しているBGMは菅谷詩織のピアノソロ。とても柔らかく穏やかで、良い意味でひっかかりの無い心地よさが、束の間、その空間を外界とは隔てられた何か神聖なものに変化させる “祈り” にも似た音楽そのものが持つ純粋さを感じて気持ちが平穏になる。

こんな日は時間がなかなか進まない。
だからといって無理に進めるつもりもない。
時の流れがゆるやかであることの贅沢さは、きっと大人にならないと気付けないものの内の一つだろう。だから、今日も丁寧に味わい尽くしたい。

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