ぐんと気温が下がってきたこの頃だが、この日は窓の外に暖かい日差しを感じたのでふらりと黄金山に行ってみた。坂道なので、STRiDAはひきずって登ることになるがこんな気候の日にはそういう散歩も悪くない。
頂上に到着した時に空腹を感じたので、軽く何か食べるものはあるだろうかと、そこにある小さな売店に近づくと店先に白く湯気が立っている鍋がストーブにかけられてあるのが見えた。この季節にそんな光景を目にすれば「おでんに違いない」と、答え合わせをするまでもなく分かるものだ。鍋の中を覗いてさぁて何を選ぼうかと考えていると「好きなものを取ってね。」と店の中からおばあちゃんのやさしい声が聞こえてくる。コンニャク、タマゴ、ちくわを器にとってお会計を済ませて外に用意されているテーブルで太陽の熱を感じながらちょっと休憩する。
しっかりと味の染み込んだ熱々のおでんをかじりながら周囲を見回すと、久しぶりの暖かさのせいだろうか、人は結構多くてそれぞれが思い々々に暖かい気候の中で楽しんでいるようだった。
人の多い展望台とは逆の方に行ってみると、太陽の光がよく当たる階段に猫さんたちが集まって気持ちよさそうに日向ぼっこをしていた。ほとんどの猫さんはもう人間に慣れているようで、近づいてもササッと距離をとることもなく「少しなら撫でてもいいよ」という感じ。
撫でられているうちに気分が高揚してきたのか、砂だの枯葉だのがある場所で転げ回るものだからすっかりゴミまみれになったりもしていたが、あたたかな日差しには勝てないようで、からだに付いたゴミを取るのは人間に任せてゴロゴロいいながらまどろんでいた。
階段の上の方にはラスボスのような眼光でこちらの出方を窺っている黒猫氏がいた。
さすがにこの子は触らせてくれないかなぁと思いながら近づくと、ラスボスでも何でもなくて普通に懐っこい猫さんだった。陽光に暖められたふっかふかの毛並みを撫でるのは気持ちがいい。
細々とレンズを変えたりフィルターを変えたりしながらのんびりとこの季節ならではの表情を撮影したあと、満足してSTRiDAにまたがった。登り坂では時間がかかったが、くだり坂はスゥーーっと滑るように降りられる自転車であればあっという間にふもとに着く。
その途中、歩道のど真ん中に猫が落ちていた。
ちょっと心配になるくらいの落ち方をしていたのだが、近づくとふわっと頭を上げて眠たそうな目でこちらの顔を見るがすぐに元の状態に戻る。撫で甲斐のありそうな横腹をサァーーと撫でると、バチッときた ─ 静電気か。その後もサァーーと撫でる度にバチッとくる。こんな電気猫は初めてでちょっと面白かったのだが、当の本人は電撃を感じていないのか、或いは “でんき風呂” よろしくその刺激がクセになっているのか、尻尾だけをゆらゆらとさせながら陽光の暖かさに溶けていた。