早めに目が覚めたので、朝焼けを眺めながらゆっくりと露天風呂に入って前日の成果やこの日の行程を考えてみた。事前にある程度の動きは決めておいたが、現地に入ると色々とあるものなので、それらに反応して臨機応変に動いてこその旅である。
広々とした景色を眺めながら朝食を済ませて、早めに宿を出発することにした。
天気はこの日も素晴らしい。
午前中は枕崎をいろいろと散策して空気感を味わってから、久木野を経て加世田に戻ることにした。まずは、海にそびえる岩塊 ─ 立神岩へと向かい、近くの『火之神公園』を訪れる。
平日であったが、公園内には多数のキャンパーがテントを張っていて、眩しい朝日の中、各々がなごやかに過ごしていた。広々としていて、遊歩道や岩場、休憩所などが整備された気持ちの良い公園。こういう場所には何故か “鐘” が設置されていることが多いのだが、ここの鐘は音色がとてもしっかりしていて良かった。
ひらけた場所にあるベンチでしばらく景観を楽しみながら休憩して、街中に戻った。
枕崎は割と芸術に関心が高いところなのだろうか『南溟館』という文化芸術推進をやっていそうな施設が運営されていたり、街中のいたるところに彫刻作品が展示されたりしていて興味深かった。しかも、この街中の彫刻群はそれぞれがクオリティの高い出来栄えで、これらを全て見て回るだけでも価値がありそうだなと感じた。再び枕崎を訪れる際にはそんな時間をとれたら良いなと思う。
この日は、特に急ぐこともないので少し街中を見て周ってから、前日とは逆のルートを辿ってストライダで山間に入り久木野へ向かった。一度通ったことのある道は、一度目よりも短く早く感じる。初めての道では、それが正しい道なのかどうか分からないという心理的ストレス・不安が時間を長く感じさせるためだろうか。
久木野小学校跡で写真を撮っていると、宅配業者が配達に来て、ちょっとしたトラブルに見舞われていたので軽く手を貸したのだが、それを見ていたらしい現地の方が近づいてきた。よそ者に警戒して遠巻きに観察していたのだろうが、悪いヤツではなさそうということが分かったのか、声をかけてきて、軽く言葉を交わした。鹿児島の特性なのだろうか、人も猫も最初は警戒して多めに距離を取るけれど、慣れると徐々に(けれど早めの速度感で)距離を縮めてくるフレンドリーさがありつつも、適切な距離は保って変に踏み込んではこないなと感じた。
この感じ、個人的には嫌ではない、ほど良い距離感で、旅程を通して終始どこを訪れても、不快を感じることがなかったのは土地の性質が自分の感覚に合っているということなのだろう。
用件を済ませて加世田に向かう途中、ウイスキーの醸造所に立ち寄って見学したり、神社にお参りしながら気がつけば加世田に到着して、カフェ『SUNSEA5』で休憩をとった。なるほどなというネーミングセンスが素敵で、ハワイ感が強い個性のあるカフェだった。
その後、宿にチェックインする前に海の方に行ってみた。サンセットブリッジの下では親子猫に遭遇。好奇心旺盛すぎる仔猫と、言うことを聞かない仔猫にちょっとイライラしているママ猫が面白くてずっと観察してしまった。
吹上浜海浜公園もやはり例に漏れずによく管理されていて居心地の良い公園だと感じた。広大な敷地の割に人がまばらなのでとてもゆったりと気持ちよく過ごすことができそうで、近隣に住んでいる人が羨ましく思えた。
鹿児島は本当に公共の場の管理の仕方に品があるというか、クリーンであることの重要性をわきまえているというか、場所のあり方とそれに寄り添う人の心持ちのあり方の関係性という点で、どこかノルウェーやデンマークといった北欧諸国で感じたものと同質の心地よさを感じた。