kishin 貴真

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20201022

/ART

Vネイルで額縁を補強

額縁の制作が愉しい。自分で設計/制作すると既製品にはないサイズを自由に構築できるし、既製品を購入するのに比べて半値以下で仕上げることもできる。

基本的な構造は誰にでも想像できる通り、枠となる上下左右4本の木材の端をそれぞれ45°にカットして木工ボンドで接着する。小さいサイズであればこれでも強度的に問題無いのだが、ある程度の大きさになると木工ボンドの接着だけでは心許ないということになるため更なる補強が必要となる。

その際に便利なツールが『Vネイル』である。

『V-Nail』『V釘』と表記されることもあるが、その名の通りV字型をした特殊な釘で、薄い金属板が90°に折れた形状で片側に刃が付いている。本来はネイラーと呼ばれる専用の機器で木材に打ち付けるものらしいが、金槌で打つことも可能である。その形状から推測できる通りで、木材を90°に接合する際に重宝する釘である。額縁のカドでよく利用されるのはもちろんであるが、“90°に交差する箇所の補強” という本質を分かっていれば額縁制作以外にも用途の幅は意外と広そうである。

額縁を製造する会社であれば設備としてネイラーを所有しているだろうが、個人がDIYレベルでVネイルを扱うのであれば手打ちすることになるだろう。しかし、特殊な形状ゆえにキレイに打ち付けるためには、まっすぐな釘とは異なるちょっとしたコツが必要であることが分かったので書いてみる。

まず基本的なところとして、通常の釘の場合には力の加わり方は中心部に集中して “点” として打ち込まれるため扱いは非常に容易である。しかし、Vネイルの場合にはV字状の “線” で打ち込むため、線に対して全域に均一に力が加わるように叩くのは、やってみると極めて難しい。

実際、初めて打ち込んだ時には、Vネイルが倒れたり、部分的に斜めに刺さったり、衝撃ですっ飛んでいったりと、うまく打ち込むことができなかった。また、高さが10mm前後と小さいものであることも加力が安定しない大きな理由でもある。

次に念頭に置いておくべきは、釘のように細い棒状ではないので、差し込む物質としてなかなかの体積であるという点である。つまり、木材の木目や硬さによっては打ち込んだ際に割れを生じやすいということである。

こうしたことを踏まえ、Vネイルをキレイに手打ちするコツを紹介したい。

まず、割れを予防するためには、木材の端に近い部分に打ち込むことは可能な限り避けること。そして、打ち込む前に霧吹きで木材を湿らせることである。湿らせることで一時的に柔軟性を与えて衝撃による割れを防ぐと同時に、Vネイルが入り易くすることもできる。

準備が整ったらVネイルを打つのだが、この時重要な点は、金槌でVネイルを直接叩くのではなく、押さえとなる小さい金槌を間に配置する。そして、少しずつ打ち付けながら状態を見て間の金槌の角度や押さえる力加減を微調整することでVネイルの線状全域に均一に力を加えていくことができるようになる。私は100円ショップで購入したヘッドの直径が14mm程の小さい金槌を使っているのだが、これがVネイルの打ち込みには丁度良いサイズで重宝している。

Vネイルの手打ちは意外と難しいのだが、コツさえつかめば何度でも失敗することなく打てるようになる。

特殊用途のVネイルなので、DIYをやっている人でも縁遠いモノかもしれないが、何かのきっかけで使う機会が訪れるかもしれない。そんな時に、ちょっとしたノウハウとして上述のコツを頭の片隅にでも入れておいたならば、きっとうまく扱えるのではないかと思う。

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