kishin 貴真

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20200624

/ART

トリマーデビュー 小さな額縁

以前から興味があった電動工具 トリマー『リョービ TRE-40』を購入した。

まずは肩慣らしに手元にある端材を使って加工の感覚を体験してみると、適切な木材さえ選択すれば思っていた以上に精密な切削ができることが分かり、この道具、格別に気に入った。

トリマーを手に入れたらまず最初に作ろうと考えていたものに早速着手した。
小さな額縁である。

松本香菜子氏の〈月夜を行く〉という非常に小さい日本画を所有していて、これは購入当初から森原明良氏[作]の小さな額縁に入れられていたのだが、壁に設置しているのを見るたびに3点気に入らないところがあったので、それを改善した小さな額縁を作りたいと思っていた。

不満点その1:作品が見える開口部の厚さ(カカリという)が厚すぎて照明の影が作品に濃く落ちてしまう。そのため、カカリをもっと薄くした構造にしたい。

不満点その2:開口部のサイズが作品サイズよりもかなり小さいため、隠れてしまう部分が多いので、できるだけ作品全体が見えるように開口部のサイズを最適化したい。

不満点その3:背面にあるトンボ(背面板を止める金具)が突起となっている関係上、壁にピタッと設置できない。

この3点を解決した設計図を描いてから木材の切り出し、トリマー加工を経て、組み立て、作品の移植を完了した。トリマーデビューをして最初の制作物としては上々の仕上がりになってなかなかにご満悦である。

我ながら気に入っている設計構造のひとつは、作品の固定方法である。

一般的な額縁の場合、前面側から…透明ガラス(樹脂板)→作品→背面板→トンボというように、板状の物を重ねていき、裏の開口部からこれらが脱落しないようにトンボで固定するというのが王道であるが、トンボを使わずに作品を固定する方法を考案して採用した。

ポイントは、背面板の代わりに薄い樹脂板を使用し、若干小さく設計した開口部に嵌め込む際には樹脂板をちょっと歪曲させて挿入し、内部でレールに入ればまた元通り平らになるという樹脂板の弾力を利用した構造にしている。最初は1mm厚の樹脂板で試したのだが、25×55mmという極小サイズでは思ったほど曲がらなかったため、0.5mm厚の樹脂板2枚に変更したところ狙い通りの着脱構造を実現できた。

また、壁に設置する構造としては、背面の突起を無くすために、木枠背面にフレンチクリート構造を内蔵させて壁に対して隙間なく設置できる設計としている。

トリマーは、刃(ビット)の微妙な位置調整さえこなせばコンマ数mmの精度で木材を切削できる優れものだと理解できた。特にアガチス材などの肌目が細かい木材での切削は美しく作っていてとても気持ちが良い。逆に、ミリ単位の切削にはMDF材のような柔らかく脆い素材は向かないことも分かった。こうした素材の細い箇所・薄い箇所ではビットのパワーに負けて割れが発生しやすいので、指先付近で超高速回転する金属刃の近くで扱うには危険さえ伴うため適切な木材選びは殊に重要だと感じた。

今後は更に木材の継ぎ方や装飾系ビットの可能性などを研究しながらトリマーを思いのままに操って楽しくより複雑な構造のものを色々と制作してみたい。目下のところは、鉋を刃が出たまま安全に収納する専用ケースを設計中である。

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