kishin 貴真

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20190404

/PHOTOGRAPH

工業用綿棒で一眼レフをクリーニング

Lightroom かすみの除去

レンズ交換式の一眼レフカメラの宿命として、イメージセンサーに付着したゴミや汚れのメンテナンスというものがある。メーカーに依頼すれば確実に綺麗にしてもらえるが、プロに任せる安心感と引き換えに相応のクリーニング費用が必要となるため、可能なら自分で行いたいものである。

一眼レフのイメージセンサー(正確にはローパスフィルター)のクリーニングは、「素人がやってはいけない」と主張する人もいるが、実際にやってみれば、極端に不器用でもない限り意外と難易度は高くないものである。無論、完全に自己責任の作業なので、以下を参考にされる方はその旨ご了承願いたい。万が一、傷つけてしまった場合には、機種にも依るが修理費用は数万円コースになる。

私がクリーニングに使用しているオススメのアイテムを紹介してみる。

必要なものは以下の3点のみとなる。
○ ブロワー
○ 無水エタノール
○ 工業用綿棒

ブロワーに関しては、品質が悪いものや経年劣化したものである場合、ブロワー内部の劣化で細かい塵(ゴムの破片?)が発生して、吹き付ける度に逆にゴミを吹き付けてしまう状態になっているケースもあるので、そうした状態になっていないか、まずは確認する必要がある。

堀内カラー HCL デジタルクリーナー

この用途の無水エタノールとしてよく紹介されているのは《健栄製薬 無水エタノール (500ml)》なのだが、1度のイメージセンサーのクリーニングに使用するのはせいぜい3〜4滴なのでさすがに多すぎると思い、少量サイズのものを探した結果、私は《堀内カラー HCL デジタルクリーナー (35ml)》を使用している。この成分ももちろん無水エタノールであるから問題はない。何よりパッケージに“ローパスフィルター用”と記載されているのは安心だ。

ちなみに、35mlで600円程度するため割高だと感じるかもしれないが、果たしてそうだろうか。

googleによると、水1滴の体積はおよそ0.04mlである。1回に5滴使用するとして計算すると、35mlなら175回使用できることになる。月に2回クリーニングしても7年間も保つ分量である。実際には、イメージセンサーの他にもレンズのクリーニングでも使用することもあるだろうが、それでも数年は余裕で使える量なので、決して高価なパッケージではないだろう。何よりボトルが小さいので数滴単位で使うにはむしろこの方が扱い易いという利点と、保管時に嵩張らないという点でとても気に入っている。

日本綿棒 JCB A3D-100

3つ目は最も肝心な綿棒である。

昔、最初の一眼レフとしてNikon D40を使っていた頃には手元にあった一般的な綿棒を使っていたりもしたが、クリーニングの際に毛羽が清掃面に残ることも多かったため「毛羽立たない綿棒は無いものか?」と探してみた結果、“工業用綿棒”というカテゴリーがあることを知り、その後愛用しているのが《日本綿棒 JCB A3D-100》という高品質綿棒である。品質は高いが価格はリーズナブルである。この製品の説明にも「センサーやレンズ表面の清掃」とあるように、毛羽立ちがほぼ無くイメージセンサーのクリーニングには正にうってつけの綿棒である。

クリーニングの手順は以下の通り。

(1) 電池をフル充電にする。
(2) f16程度まで絞って白い面などを撮影しゴミの位置を確認。
(3) エアコン等を切って、空気の流れをできるだけなくす。
(4) ミラーアップして、ブロワーでゴミを吹き飛ばす。

このあたりまではネット上に情報が多数あるので説明は割愛しよう。

(5) 工業用綿棒に無水エタノールを浸み込ませて、ゴミのある位置のみをクリクリと擦る。
押し付けるというよりは、先端で軽く優しく撫でる様に小さな円を描く程度で大丈夫だ。また、無水エタノールは浸み込ませ過ぎると乾きジミの原因になるので、本当に少しだけにするのがコツである。適量の無水エタノールであれば1秒程度で乾くので、すぐに綿棒をひっくり返して、乾燥している側で渇きジミが残らないように乾拭きをして仕上げる。両端に綿球が付いている綿棒を使用するのは、この手順を素早く行うためである。これをゴミのある箇所の分だけ繰り返す。無論、一箇所で使った綿棒は捨て、次の箇所では新しい綿棒を使うことは云うまでもない。

なお、初めてクリーニングを行う場合や、長期間クリーニングしていない場合には、センサー表面は全面的に薄〜〜く汚れている(曇っている)場合が多い。この場合、全面的に均一に汚れているため一見すると汚れていないようにさえ見える。そのため、無水エタノールで拭いた箇所だけが急にキレイに見えることから怖くなってクリーニングを中断し「失敗してしまった」「コーティングが剥げてしまった」などと思い込んで騒いでいる記事を見かけたりもするが、単に部分的に“キレイになっただけ”なので慌てる必要はない。このように全面的に汚れているような場合には、まずは若干多めに無水エタノールを湿らせて全面を覆っている曇りを除去してから→各所の目立つゴミを処理して仕上げるというように、段階を踏んだクリーニングを行うと良いだろう。

なお、センサー上でのゴミの位置の見当の付け方は、以下の図のようになる。

液晶モニターとローパスフィルターの位置関係図

液晶モニターで右上に写るゴミは、レンズ側から見たセンサー上では右下に付着していることになる。
センサー上の像を液晶に映す際には上下左右がそれぞれ反転する特性を理解していれば分かるだろうが、ややこしいので、液晶モニターを見た時とレンズ側から見たセンサー上での位置関係は単純に『上下が反転した位置』とだけ覚えておけば良いだろう。

ちなみに、Adobe Lightroomを使っている場合には、撮影したRAW画像を現像モードで、「かすみの除去:+100」「露光量:明るく調整」することで、ゴミの所在を浮き上がらせて鮮明に確認することができる。この記事の最初の写真はこの方法でRAW現像したものである。Nikon Dfを中古で入手して嬉しくなって試し撮りに港へと出掛けた時の写真なのだが、中古であるためかなりの数のゴミが付着していた。帰宅後すぐにセンサークリーニングを実行したことは云うまでもない。

APS-Cセンサー用スワブ / 工業用綿棒

重要なのは、ゴミが付着していない“綺麗な箇所には手を出さない”ということである。

イメージセンサークリーニングに特化した平らなスワブも販売されていて、試しにそれを使ってみたこともあるのだが、広い面をサーーッと拭けるのは良いのだが、ゴミが無かった場所にゴミが移動したり、一度に拭く面が広いため端から端までに行く間に拭き始めの側に無水エタノールの渇きジミが残ったり、端や隅の部分にゴミが残ったりと、非常に効率が悪く何度繰り返しても全体的にキレイになることはなかった。そうした経験から、ゴミがある場所だけをピンポイントで攻めることができる工業用綿棒の使用を私的には採用している。

JCB 工業用綿棒 A3D-100は先端が楕円球状であり、一般的な綿棒に比べて綿球が硬くなっている。
そのため接地面積は狭いので、使用前に油分の無い清潔なお皿等に先端を押し付けて潰し、ある程度の接地面積を確保してから使用した方が作業がはかどる。ただし、センサーの隅や角に対してクリーニングする場合には潰さずに接地面積が狭いまま作業した方がより細かい部分まで対応できる。そうした使い分けができる点でも工業用綿棒によるクリーニングは勝手が良い。

(6) 気になる箇所のクリーニングが終わったらミラーアップを終了し、再度撮影してゴミが落ちたかどうか確認する。キレイになっていればクリーニング完了。ゴミが残っていれば(4)〜(6)を繰り返せば良い。

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ちなみに、一般的に行われているらしいシルボン紙を使ったクリーニングに関しては、私は一度も経験がない。木製の軸にシルボン紙を巻きつけて…というのが何となく手間がかかりそうでイヤだなというのと、今まで工業用綿棒によるクリーニングでセンサーに傷を付けるなどのトラブルが無かったため、自分としてはこの方法で良しとしている。

撮影に行った出先でレンズ交換の際にゴミが入り込んでしまうのは仕方ないが、最初のワンショットからゴミが写り込んでいるとガッカリしてしまう。そうならない為にも、カメラを持ち出す前にはゴミの写り込みが無いかチェックしたり、定期的なセンサークリーニングを習慣にしたりと、気持ちよく撮影できるよう心掛けたいものである。

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