kishin 貴真

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20190318

/PHOTOGRAPH

Nikon Df を愉しむ

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO50 f2.8 1/4000

Nikon Dfは、2013年に発売されたニコンの一眼レフだが、通常のラインナップからは少々毛並みが異なる特徴を持った魅力的な一眼レフである。最初に店頭で触った時、その外観に惚れた。そして、シャッターを切った時、そのキレの良さと心地よさ、そして上質な音と振動に「あぁ、自分はこのカメラをいつか手に入れるんだろうなぁ」と直感した。

6年越しでその時が訪れた。しかも思いがけず急速に。

手に入れたのは中古のDfだが、コレクターでもなければ所有欲を満たすためでもない私にとって、カメラは完全に道具でしかないため、中古であっても機能すれば全く問題はない。いやむしろ、新品で購入して傷を恐れてガシガシ使えないよりは、最初から傷があってもきちんと機能するのであれば、そしてその分格安で入手できるのであれば願ったりである。そんな考えで購入したDfはグリップ部に軽く凹みがある程度でそれ以外には特に目立った傷もなく無論完動品で、シャッター回数もメーカー公称耐久値の1/10程度という上等なコンディションであった。このコンディションで、現在の実勢価格の半額程度で入手できたことには大変満足している。※ちなみに、Nikonのデジタル一眼レフのシャッター回数の確認はMacなら簡単にできる。最後に撮影した画像を標準アプリの『プレビュー』で開いて『ツール>インスペクタを表示』を選択し、詳細情報インスペクタのExifタブ内にある「イメージ番号」を確認すればよい。

そして、私にとっては初めてのFXフォーマットでもある。

今まで使用してきた一眼レフは全てDXフォーマットであったため、交換レンズも自動的に35mm換算で1.5倍の焦点距離となってしまう訳だが、それを分かった上でレンズを選択し楽しんできたので特に問題を感じることは無かった。

しかし今回、Dfの購入を検討し始めた時にまず気になったのは、所有しているレンズが果たしてDX専用なのかフルサイズ(FX)対応なのかという点である。

ひと昔以前には、交換レンズを10本前後持っていたのだが、2014年の断捨離で超お気に入りの1本を残して他は全て譲り渡してしまった。残した1本は、Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Asphericalというマニュアルフォーカスレンズで、ギリギリだがパンケーキレンズと云ってもよいだろうコンパクトさを持った非常に携行性の高い一本である。写りもクリーンな印象で、どんな光も心地よく捉えてくれる。もうこのレンズだけはずっと惚れ込んで使っている。

素晴らしいことに、このレンズはフルサイズ対応でFXフォーマットでも問題なく撮影できた。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO100 f8 1/1000

しかも、Dfに装着すると、そのアナログな操作感がDfのコンセプトともとてもお似合いで、思わずニヤニヤしてしまう。まずは、環境光の具合からISOダイヤルで感度を決める。そして、撮りたい写真をイメージしつつレンズの絞り環をカカカッと回転させて絞りを設定。そうしてようやくファインダーを覗きこみ構図を探りながら、マニュアルフォーカスレンズ特有の滑らかなフォーカスリングを回してヘリコイドを動かしてピントを合わせる、と同時にコマンドダイヤルでシャッタースピードを調整して最終的な露出を決め、シャッターを切る。もちろん、Dfでも対応レンズを使用すればオートフォーカス撮影や各種オート撮影は可能なのだが、ゆったりとした時の流れを感じながらひとつずつ自らの指先で設定して時間をかけて一枚の写真を撮影する心地良さはカメラ任せのオートでは決して味わえない。Dfは、そうした醍醐味を改めて実感させてくれるデジタル一眼レフカメラである。

そもそも、レンズに付いている絞り環などと云うものは、レンズの手入れをする際に手動で絞りを開いて光の具合を確認するくらいで、撮影の際には一生使うことは無いだろうと思っていたのに、Dfを手にしてからは「もう、絞り環の無いレンズなんていらないな」とさえ感じている自分がいることに驚きである。

現在は他に2本の交換レンズを持っている。1本は、超広角が欲しくて購入したSIGMAのリーズナブルなレンズ10-20mm F4-5.6 EX DC HSM。こちらは残念ながらDX専用なので、FXフォーマットの広い画角を活かせないが致し方ない。とはいえ、35mm換算でも15mmという超広角はやはり魅力的な画角であり、Dfで撮影した場合、絞り開放では周辺光量落ちは多少あるものの、補正や絞り込みで十分に対応できるレベルなので今後もこのレンズは活躍してくれるだろう。

Nikon Df:SIGMA 10-20mm F4-5.6 EX DC HSM:[10mm] ISO50 f8 1/1600

もう1本は、ふらっと中古カメラ屋に立ち寄った際に面白いなと思って購入したNikon Ai AF Zoom Nikkor 28-105mm F3.5-4.5D。お遊び程度で買ってみたものの、結構な実力を持っていたようで、写りは現代的なクリアでシャープとはいかないが、非常にコクのある写真が撮れてこれはこれで良いヤツで気に入っている。そのうえ、マクロ機能まで付いているちょっと変態的なところがあるのだが、接写のボケ味も悪くはないのでお散歩レンズとしてはかなり重宝する1本だ。これがDfではフルサイズで使えるのはとても嬉しい。

Dfが手元に来て、取扱説明書を睨みながら夜の室内でテスト撮影をしていてふと思ったのだが、ISO感度を上げてもノイズが非常に軽微である。それは、初めての一眼レフNikon D40を使った時の感覚を思い起こさせた。

この2機種は、搭載しているセンサーの大きさの割には画素数を抑えることで、画素ピッチに余裕を持たせ高感度域での低ノイズを実現しているという点で共通していて、Dfの場合には、ISO3200までは何の躊躇もなく上げることが可能だし、ISO6400でさえも等倍に拡大して見ればノイズ感が若干確認できるものの十分に実用範囲、ISO12800くらいまで上げてようやくノイズが少しだけ主張し始めるという、かなり高感度性能に優れた仕様となっている。つまりは撮影シーンを選ばない訳で、フラッシュを搭載していないのも頷ける。画素数を追わずに、美しい画質を選択したDfの開発陣には拍手を送りたい。

そうしたポテンシャルの高いカメラを手にした以上、プリセットされているモードをただ選択して撮影するのではやはりつまらない。幸いなことに、Nikonからは『Picture Control Utility 2』というソフトウェアが無料で配布されていて、このソフトを使うことで、自分だけの撮影モード=カスタムピクチャーコントロールをカメラに設定することが可能となっている。このソフトを使用しなくても、カメラの操作だけでカスタムピクチャーコントロールを作ることはできるのだが、より細かく独自の画を作り込みたい場合には、このソフト内で生成できるカスタムトーンカーブを操る必要がある。

早速、Picture Control Utility 2の最新版Ver.2.4.1をインストールして使ってみたところ、私のMac環境(High Sierra 10.13.6)では、【カスタムトーンカーブを使用する】にチェックを入れた瞬間にアプリが落ちる不具合があって使用できなかった。諦めきれずに古いバージョンを検索し、遡ってひとつづつ試したところ、Ver.2.3.1ではカスタムトーンカーブが利用できたので、同様の症状で諦めていた方は試してみると良いだろう。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO200 f2 1/500

まず最初に作ったのは、敢えて非常にコントラストの高いモノクロ撮影用のカスタムピクチャーコントロールで、ハイライトは飛びまくるし、暗部は黒つぶれするしで、Dfのせっかくの豊かな階調表現も「台無しだ!」と開発者に怒られそうな設定である。けれども何故かこうした写真には想像力を掻き立てられ、とてもドラマチックに思えて私は大好きなので、この設定が私のカメラから消えることは決して無いだろう。

そんなハイコントラストで撮影した写真を載せてみよう。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO200 f2 1/4000

なんだかとっても静かに眩しい海を見つめている鳩さんがいたので、邪魔しないようにそっと撮影。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO200 f16 1/400

曇天に少し陽が滲んでいる海景を、フェルディナント・ホドラーの風景画を意識した構図で撮影。

Dfには、9個まで自分のカスタムピクチャーコントロールを設定することができるので、様々なシチュエーションを想定しながら、これから少しずつ自分だけのカスタムトーンカーブを探っていこうと考えている。これはもう楽しみでしかない。

また、せっかくNikonのオールドレンズも使える一眼レフを手にしたのだから、やはり非AIレンズなるものも1本は試してみたいと思っている。所有しているレンズの画角を考えると、その隙間を埋めるのに相応しいのは、NIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8 だろうか。気長に中古カメラ店やオークションなどを覗いて良い状態のモノがあれば手に取ってみたいと思う。良い出会いがあることを願いたい。

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