近所にホームセンター コーナンができた。
“ホームセンター”とは、無ければ無いでどうにかなるが、近場にあると覗きに行っては創作意欲を掻き立てられてしまう、楽しくも厄介なショップの総称である。
このコーナンが出来てから2ヶ月ほどしか経っていないが、早速、油絵を埃から保護しながら乾燥させる為の棚や、パソコンデスクの天板の裏側にぶら下げるように設置するポータブルHDD置き場といった、市販されていない仕様のオリジナル物をD.I.Y.しては便利に使っている。
コーナンの店内を目的も無くぶらぶらと見て回っている時に、黄緑色がかった『防腐木材』という何だか見た目が美しくない、手触りも荒く反りや曲がりもあるようなラフな木材を発見した。ホームセンターで販売されている通常の木材は、面は滑らかで、切断寸法も正確に加工されているモノが殆どなので、この荒々しい印象の防腐木材にはとても惹かれた。
その印象を持ち帰って、発想してみる。
防腐木材の表面の荒さを活かしつつ漆黒に塗って、モノクローム写真を飾る為の額縁を作ったら素敵ではないか、そう思って、店頭で記録しておいた防腐木材の寸法を元に図面を作成。後日改めて、必要な材料を調達しにコーナンへと向かう。
コーナンの店内には手動/電動工具やエプロンなどを無料で貸してもらえる&自由に工作作業ができる《D.I.Y LABO》というスペースが用意されているのだが、これは便利で良さそう。特にドリルやノコギリなどの工具を所有していない人には便利かもしれない。そのうち、どういった電動工具が使えるのか詳しく確認してみようと思っている。
とりあえず、想定しているラフな額縁を作るのには、所有しているノコギリ、電動ドリル、金槌などで十分なので、D.I.Y.スペースは利用せずに、いくつかの金物部品と2m近くある木材を2本購入して肩に担いで家に帰る。こういった長細い大物を持って歩いていると、大薙刀を振るう武蔵坊弁慶の如し気分になってしまうのは武者魂が未だなお現代人の中にも流れている証だろうか。
持ち帰ってきた防腐木材を採寸してみると、商品寸法として貼られているラベルにある数字と比較して2〜3mmも小さくて謎だったが、この表示された数値はおそらく、防腐剤を浸透させることで収縮する前の木材寸法なのだろうと理解した。その寸法の違いを図面上で修正してから、額縁制作のための部品の切り出し作業を行う。
防腐木材の荒さ・反り・厚さのバラつきなども考慮したラフでシンプルな構造にしたため、精巧を要さず、組み上げも比較的短時間で終えることができた。とはいえ、額縁である以上、背面の“かかり”を含む額縁に欠かせない構造は持ったものとして図面を作成した。市販されている額縁の場合、フレーム部とかかりはひとつの木材から切り出しているものが殆どだと思われるが、そうした加工はそれなりの工具や設備がなければ困難なので、2つの木材を重ねることで、かかり部分を形成している。売り物ではないのでこの構造でも必要十分であり、何の問題もなく額縁として機能する。
彩色前の状態でも想像した通りの荒く力強い雰囲気が出ていることが確認でき、この素材を使って正解だったなと確信した。その後、黒い塗料を二度塗りしてからしっかりと乾燥させ、仕上げとして背面各部に額縁用のトンボや三角吊カンなどの金具を設えて完成。
漆黒の面の中に手触りの悪い波打った木目や筋張った節が活きている。それらが光の加減によって変化し豊かな表情を額縁に与えている。四隅の接合部のズレも素材の荒さと相まって逆に魅力的に思える。こうしたひどくラフな仕上がりの額縁は、「商品」として販売されている綺麗な額縁のラインナップには期待できない。キレイに仕上げなくてもイイ。それもまた、D.I.Y.の醍醐味のひとつである。
D.I.Y. 万歳!
R.I.P. 安らかに眠れ!