kishin 貴真

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20231115

/ART

マスキングテープでエッジを鋭く

マスキングテープは、塗り分けの際にエッジを効かせてパキッと区分けするのにとても便利なものだが、使い方次第では狙った通りのシャープさを得られないこともあるので注意が必要だ。

失敗例:貼り付け面とテープの間に大きな隙間がある

マスキングテープでよくあるトラブルは主に3種類だと思う。

●マスキングテープを貼り付ける際にテープがよれて隙間ができている場合、隙間に塗料が入り込んでしまう。
●貼りつける面自体に微細な凹凸があって、ぴったりとマスキングテープが貼れない。
●貼りつける面の素材が染み込む性質のもの(密度の低い木材、紙など)で、塗料が染み込んで綺麗なエッジにならない。

上記の3種類だが、物理的に考えれば根本のところは全て同じで「マスキングテープの輪郭線で乾燥した塗料を切ることができない状態」になることが問題なのである。

これら全ては、塗料が液体状であるために、入り込んだり染み込んだりすることが原因なので、通常はそうならないようにマスキングテープをできるだけピッタリと貼り付ける努力をするだろう。もちろんそれは必要なのだが、貼り付ける面の状態や素材によってはそれだけでは対応が難しい場合もある。

そこで、逆転の発想をして、塗料より先に『透明な液体を入り込んだり染み込んだりさせてしまう』というのが有効な対処法であることは意外と知られていない。

以下はアクリル絵具の場合の例となるが、目的の塗料を塗る前にまずは乾燥後に透明になるマットメディウムなどを塗ることで微細な隙間を埋めてしまう。入り込んだり染み込んだりしても透明なので分からない。それが乾燥してから目的の塗料を塗布するという工程を経ることで、綺麗なエッジを得る成功率が飛躍的に上がるのだ。

手順をまとめると以下になる。
❶マスキングテープをしっかりと貼る。
❷マスキングテープの境界部分にマットメディウムなどの、乾燥後に透明になるものを塗布して微細な隙間をあらかじめ埋めてしまう。
❸メディウムがしっかりと乾燥するのを待つ。
❹目的の塗料を塗布して、指触乾燥後にマスキングテープを剥がす。

一般的には、❶からいきなり❹の工程に移るわけだが、❷・❸の工程を間に挟むことの効果は絶大で、そこから得られるエッジの鋭さには感動さえ覚えるほどである。

寄って観察してみると、テープの貼り付け面に多少の凹凸があっても最終的な塗料の切断面はかなりシャープに仕上がっているのが分かる。

こうした各素材の物理的特性を理解して活用した作業方法を身につけていればマスキングテープでシャープな線を出すのがとても容易になるし、マスキングテープの粘着力が弱い場合の補強としても副次的に機能する。また、素材が違う場合でも応用ができる。要は “透明な液体で先に隙間を埋めること” なので、例えば木材を塗る場合にはマットメディウムの代わりに艶消しニスを使えばいいし、金属やガラスの場合にはそれに合ったプライマーを用いれば良い。

マスキングテープを使っているのに、マスキング出来ていなかった時の哀しみといったらない。そんながっかり体験が少しでも減るように、意外と浸透していないこのテクニックが広く知られるようになればいいと願う。

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