連日、梅雨真っ只中という感じでずぅぅっと雨が降り、息継ぎ程度に止んではまた降り続けていたのだが、週末にようやく一日晴れの日が訪れた。せっかくの日なので、陽が昇る頃に先日訪れた水分峡に行って散策することにした。
ようやく持ち出すことができた《PANAGOR PMC AUTO WIDE-ANGLE 28mm F2.8》は、この時点でかなり気に入っていて、まだ薄暗い道で気になった情景をモノクロで撮影してみる。気持ち良くピントが来るし、28mmレンズでは稀なくらいに全域に渡って端正にして解像感が高い描写力は、この日に更にハッキリと認識することとなる。
水分峡に到着したのは日の出の時刻をちょっと過ぎた頃。
森林公園のマイナスイオン多めのひんやりとした空気が心地よい。そして、前回来た時よりも水音が大きい。連日の雨で水量が増しているのだろう、各所にある小さな滝の威勢がいい。
この日は三脚とリモートレリーズ、それに数枚のNDフィルターも持ってきたのでゆったりとした気分で長時間露光撮影を愉しむ。
ニコニコしながら撮影を愉しんでいたら何やら気配を感じたので、視線を遠くに投げてみると、こちらを訝しげにじっと見つめる視線とぶつかった。この時、撮影に使用していたのは広角28mmレンズだったので、鹿さんを撮るために中望遠135mmレンズに付け替えたのだが、M42マウントなのでスピーディな切り替えなどはできない。なのに、レンズを付け替えるその間、鹿さんはずっとこちらを見ていた。よっぽど「アイツ、朝っぱらから何やってんだ?」という感じに見えたのだろう。
この日持っていた135mmレンズは、最近入手した《ASANUMA AUTO-TELE 135mm F2.8》なのだが、この「ASANUMA」というレンズの情報がいくら探っても「なるほど」と参考になるレベルのものが全く見つからなかった。あまりの情報の無さに岸辺露伴の “くしゃがら” を思い出しながらも捨て値のような値付けだったので恐る々々入手してみたのだが、これが私的にはかなりの銘玉だった。
ピント面は開放でもシャープだが、一段絞ったところからとても鋭くなり微細な蜘蛛の巣一本も逃さずに捉え、前後のボケ味にクセもなくてかなり素性の良いレンズという印象。また、空間表現力もあって狙い通りの画を出してきてくれるのが嬉しい。使っていて愉しいレンズをまた見つけた。
この日、使うのを愉しみにしていたPANAGOR PMC AUTO WIDE-ANGLE 28mm F2.8も使っていて愉しいレンズだ。全域に渡ってかなり破綻の少ない描写で何より解像感が高い。製造は1980年前後らしいが、この年代の広角レンズではトップクラスの描写力と云っても良いのではないだろうか。
この年代の28mmレンズは、中心部の写りは精細でも、周辺では歪み・流れ・収差などでグズグズでも仕方ないような時代にあって、このPANAGOR 28mmはちょっと凄い。
名前にある『PMC』はおそらくは『PANAGOR Multi-Coated』の略ということで、このコーティング技術が優秀なのか、強めの逆光を構図に入れても簡単には破綻しない。それどころか、光の流れや音さえ感じるかなり雰囲気の良い写真になって、撮っていてちょっと感動した。
まだ幾度も使い込んだ訳ではないので判然とはしないが、白飛びしにくく黒潰れもしない粘り強さを感じていて、相当なダイナミックレンジの広さを持っているのではないかとの期待もある。
梅雨の合間の晴れの日に、森林公園で気持ちの良い朝を迎えた帰り、時刻はまだ8時過ぎだったが、帰路の途中に朝から営業している銭湯《安芸の湯》があったので、塩サウナで汗を流して、ちょうど良い温度の広い風呂で手足を伸ばした。