kishin 貴真

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20230109

/PHOTOGRAPH

HELIOS スクエア絞り

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f2.8 1/1000

グルグルボケで有名な旧ソ連製のオールドレンズ〈HELIOS 44-2 58mm F2〉を入手してみた。ただし、私はグルグルボケには魅力を感じていないので目的は別のところにある。それは『スクエア絞り』という特殊な改造を施してある点だ。

一般的なレンズの絞り機構は、5枚~16枚前後の複数の絞り羽の開閉によって光量を調整するため、絞りの形ができる限り円形に近くなるように設計されている。円形に近い方がボケ味が滑らかで美しい描写になるからだが、今回入手したヘリオスは、絞り開放こそ円形だが、絞っていくと正方形で変化するというかなり変態的な改造が施されている。

同種の改造レンズの中には、四角形でも四辺が曲線で構成されちょっと膨らんだ四角形のタイプもあるようだが、私が入手したものは四辺が直線となっており、まさに “パーフェクトスクエア” となっている。

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f5.6 1/1200

絞りが四角形状ということは、当然、普通ならば玉ボケになる描写が四角ボケとなる。使い方を間違えるとかなり煩い写真になってしまうため、主題と同じくらい注意を払って周辺の四角ボケの調子も確認しながら絞り=四角形の大きさを調整しつつ全体のバランスを見てシャッターを切る必要があり、こんなにも面倒なレンズはなかなか無いだろうと思う。

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f4 1/250

けれどしばらく使ってコツを掴んでくると、この類稀なる描写がちょっとクセになる。

絞りが正方形になるように絞って撮影すると、背景は固いパステルでザッザッザッとラフに描いたような独特な絵画タッチになるのだが、その前景のピント面はシャープに解像するため、両者の分離が強くなり、ちょっと見慣れない主題表現ができるのは面白い。

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f4 1/1600

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f5.6 1/1000

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f2.8 1/400

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f2 1/4000

一方で、絞り開放付近ではなかなかに空間表現力を持ったレンズのようで、質量を感じる空気を含んだ深みのある描写も見せてくれるので、スクエア絞りに飽きたら使えなくなるようなレンズではなく、意外にも表現の幅が広い優秀さを秘めていると感じている。

FUJIFILM X-E1:HELIOS 44-2 58mm F2 [Perfect Square]:ISO200 f5.6 1/1000

この『スクエア絞りヘリオス』のネット上での数少ない作例を見ると、大抵はイルミネーションなどのキラキラした点光源を四角形にするような使い方をしてしまっている。気持ちは分かるが、画面がうるさすぎる結果となるし、主題を喰ってしまうためそうした使い方ではこのレンズは活きないだろう。

むしろ、円形絞りのレンズではクリーミーなボケ味で背景を溶かして整理するのと同じように、シャープな四角ボケは非写実的な絵画タッチの描写で背景をまとめて平面化して主題を浮き上がらせるような使い方こそがこのレンズとの良い付き合い方だと思われる。

スクエア絞りの角度は固定だが、M42マウントのレンズの場合には裏技的にレンズ自体を多少回転させるくらいは撮影時に可能なので、今後はさらに、1ショットごとに四角ボケの角度にもこだわって撮影するというところまで行ってしまいそうな予感がある。本当に面倒で愉快なレンズを入手してしまったものである。

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