kishin 貴真

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20221028

/PHOTOGRAPH

イメージサークルを奪還せよ Ⅱ

FUJIFILM X-E1:Super-Takumar 55mm F2 + Kenko AC CLOSE-UP No.4:ISO200 f2 1/1600

フルサイズ対応のオールドレンズを多数所有していて、APS-Cセンサー搭載のミラーレス一眼を使うなら、フォーカルレデューサーの導入は一考の価値があると言えるだろう。その一番の理由は、それぞれのレンズの旨味を味わうためである。

通常のマウントアダプターを使用した場合、カメラに搭載されたセンサーサイズに関わらず、レンズから得られるイメージサークルの大きさは同じなので、フルサイズに比べて相対的に面積の小さいAPS-Cセンサーでは画角が狭く(焦点距離1.5倍に)なる。これはつまり、APS-Cではイメージサークルの周辺部を大胆に切り捨てていることを意味している。

フォーカルレデューサー(縮小光学系)の仕組み

フォーカルレデューサー(縮小光学系)は、イメージサークルを縮小することでAPS-Cセンサーサイズに近づけて、擬似的にレンズ本来の画角を回復させることを可能としている。
例えば、28mmレンズの場合では、28mm × 1.5倍 × 0.726倍 ≒ 30mmの画角となる。
※中一光学の《Lens Turbo Ⅱ》の場合には、イメージサークルを0.726倍の大きさに縮小する。

レンズの中央部から周辺部までシャープでクリーンに解像するような近代のレンズと違い、オールドレンズは中心部と周辺部の画質の違いが大きいものも少なくない。特に絞りを開いて撮影した場合にはその傾向が顕著で、周辺減光から始まり、流れ、歪曲や色などの各収差、グルグルボケやザワザワボケなど、「画像品質」という観点から見ればマイナスな症状が多々現れるのだが、むしろそれこそがオールドレンズの醍醐味であり旨味である。そうした症状=レンズの個性や独特の雰囲気が特に出やすいのが周辺部であるのだが、APS-Cではその周辺部をバッサリ切り捨ててしまう。

フォーカルレデューサーはそうしたオールドレンズ愛好家にとってはまさに光明をもたらす存在と言えよう。もちろん、最初からフルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼を使えるならそれに越したことはないのだが、皆が皆フルサイズ機を使える訳でも使いたい訳でもなく、そのためのAPS-C機の存在であるし、そうしたユーザーがオールドレンズの相棒としてフォーカルレデューサーを導入してみると、ちょっとだけ幸せになれるかもしれない。

FUJIFILM X-E1:Super-Multi-Coated TAKUMAR 35mm F3.5:ISO200 f5.6 1/500

FUJIFILM X-E1:Super-Takumar 55mm F2:ISO400 f2.8 1/1200

FUJIFILM X-E1:Super-Takumar 135mm F3.5:ISO200 f3.5 1/320

広角レンズはその広々とした空気感を取り戻し、標準レンズは足と連動した使いやすさを回復させ、中望遠レンズの被写体は大きくなりすぎずに適度に引き寄せることができる。

中一光学《Lens Turbo Ⅱ》の内蔵レンズ構成

なお、私が中一光学を信じてみようと思った決め手はやはり “レンズメーカーである” ということ。精巧な金属加工だけを行うマウントアダプターメーカーの場合、やはりレンズを内蔵するとなると光学系が信用できない。その点、レンズメーカーであれば光学系のノウハウも品質管理もある程度のクオリティで担保されるだろうと期待した。実際、Lens Turbo IIでは3群4枚できちんと設計されたであろうレンズを内蔵しており、そこから得られる画像に顕著な破綻は見られない。

私は中一光学のLens Turbo II (M42‐FX)しか使っていないので他のフォーカルレデューサーについては何も言えないのだが、色々と調べた印象としてはやはり、価格と品質には一定の比例関係があるようで、安すぎるフォーカルレデューサー製品はトイレンズレベルの品質にとどまっており使い物にならないという報告も散見したので、導入の際にはよく調べてみることをおすすめしたい。

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