今年のゴールデンウィーク中の天気は幸いなことに概ね快晴らしく、こんな気候ではどこに行っても騒々しいほどの賑わいに巻き込まれるだろうが、せっかくの天気の良い休日に閉じこもっているのもつまらないので、賑わいの無いところに行くことにした。
宇品港からフェリーに乗って20分ほどで到着する島、似島。
何がある島なのかと問われても返答に困るような島である。食事処も店もほぼ無いし、賑わいももちろん無い。そんな島ではあるが、『安芸小富士』なる標高278mの小さな山はあるので、今回はのんびりとこれに登ってみようと訪れてみた。厳島にある弥山の約半分の標高なので、疲れることもなく簡単に登頂できるだろう。
木漏れ日がきらきら輝き、風にさらさら呼応する枝葉は絶え間なく、近くでは何か小鳥がピチチとさえずり、遠くではケェェときっと大型の鳥が眩しく心地よい青空に叫んでいる。
時々足を止めては自然の造形に感心しながらNikon Dfのシャッターを切る。気がつけばあっという間に安芸小富士の山頂に到着した。
ちょうど正午過ぎだったので、山頂で休憩にする。
最近特に気に入っている、“もち米しそおむすび唐辛子マヨ” を作ってきたので、悠然と連なる近海の島々を眺めながらゆっくりと味わう。やはり、もち米で作ったおむすびは美味しい。そして、静かでひらけた景色は魂に心地よい。
食後のデザートにと宇品港で買っておいた、にしき堂の生もみじまんじゅうを齧りながら珈琲を飲んでいたら、別の登山客が、自然の静けさ心地よさを突き破るように騒々しさを撒き散らしながら来てしまったので、まぁ頃合いだろうと思って下山することにした。
登りがあっという間なら、下りも当然拍子抜けするくらい簡単におりられる。
まだ陽も高いので、今度は島内をストライダに乗ってぐるりと一周することにした。
海を見ながらゆっくりと走る。
観光できる何があるわけでもなく、信号機も無いので止まる機会はほぼゼロなのだが、所々に猫さんがいたので、そんな時にはSTRiDAを停めて、声をかけつつ目を合わせないようにしながら近づいてみる。手の届く距離になるとパッと逃げてしまう子もいたが、警戒しつつも逃げずにこちらの出方をうかがっている子もいた。
こんな時のためにいつも鞄の奥に入れてある猫用おやつ “チャオちゅ~る” を出してみると、それを見た途端に猫さんの距離感があからさまに変わった…。警戒心どこいった?
結局、おやつを貰っているのを見て別の猫さんが3匹も登場したので、ちゅ~る1本では足りない感じで、なんかゴメンねという空気になってしまったが仕方ない。ちょっとだけおやつを貰ってまぁまぁ機嫌が良くなったのか、逃げることもなくおのおのくつろいだり食後の毛繕いを始めたりしていた。恐るべし “ちゅ~る” の魔力。
それにしても、開放絞りF1.2で撮ると猫さんのモフモフ感はとても柔らかそうで良い。
この日は最後に、足元に見つけたちいさく咲く花と夕陽とゴーストでお気に入りとなる数カットを撮影することが出来たのでとても嬉しかった。ゆったりと過ごせる静かな時間にささやかなる満足感、こういう素朴さこそ、ある意味では得難い贅沢だと私には思える。