kishin 貴真

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20190329

/OTHERSPHOTOGRAPH

似島をふらり散策 前編

Nikon Df:NIKKOR-N・C Auto 24mm F5.6:ISO100 f2.8 1/800

不意にぽかんと一日空いた。春の訪れで桜が咲き始め、天気も良く暖かかったので、以前から気になっていた近隣の島にふらりと出かけてみることにした。

広島に来てから、広島港からフェリーで近隣の島に簡単にアクセスできることは気になっていたのだが「そのうちに、そのうちに」と思いつつも、結局機会を作らずにいたので、今年は各島に必ず行ってみようと決めている。まず最初は、特に何があるという感じでもない似島に行ってみることにした。

乗ったフェリーは似島汽船の『じふこ十第』だ。この船体や車体の側面に右読みで記載するという、時代錯誤で認知心理も理解していない悪しき風習はいつになったら無くなるのだろう。

ともあれ、フェリーはいい。

海を越えていく感覚は、それがたとえ僅かな距離だとしても、見知らぬ土地へと向かう高揚感と緊張感が心地よく、ちょっとだけコロンブスになった気分にさせてくれる。途中、灯台を通り過ぎてそれが次第に遠く小さくなっていく様や、カモメが見送りに来てくれたりという光景が清々しい。

Nikon Df:NIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8:ISO100 f8 1/1250

初、似島に上陸。島の中での移動のためにもちろんSTRiDA(ストライダ)に乗って行った。

肩からはNikon Dfをさげている。この日、持って行ったレンズは愛用のVoigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Asphericalと、非Aiレンズを使ってみたくて最近入手したNIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8という二本の単焦点レンズ。特に24mmという画角は今まで常用したことがなく構図の作り方がまだまだ手探り状態なので、この似島行きは24mmに慣れるためという目的もあった。

港からまずは右に行くか左に行くか。特に目的も無かったため雰囲気で右へ、南へとゆっくりとペダルを漕ぎ始めた。海沿いに道が延々と続く中をSTRiDAで軽やかに走っているだけで気分が晴れ々々としてくる。海の水は意外にも透明度が高く、陽光を深く受けて綺麗な青緑に揺らめいている。なるほど美味しい牡蠣が育ちそうだ、と牡蠣養殖の知識など無いのに勝手に想像してみたりもする。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO100 f2 1/2500

STRiDAに乗ってゆったりと走りながら気になったものがあれば立ち止まって写真を撮る。そしてまたゆったりのんびりと走り出す。そんな繰り返しの中、ぽつりぽつりとまだ三分咲きほどの桜の淡い桃色が目に留まる。あと数日も経てば各所で満開になった壮麗な桜を目にすることになるだろうが、咲き始めのこの子達もまた慎ましやかで愛らしいものである。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO100 f2.8 1/1250

こういった非都会を通ると必ずと云っていいほど古びた小屋的なものをひとつやふたつ目にする。
そして、カメラを持っていたら無性にレンズを向けたくなるのは何故なのだろうか。

Nikon Df:NIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8:ISO100 f2.8 1/400

これを、カメラ標準のモノクロームを自分好みにしたカスタムピクチャーコントロールで撮影してみる。標準のモノクロームよりコントラストを上げ、しかし明部・暗部の階調も殺さないようにトーンカーブを微調整しているもので、これを適用しつつ40年前のレンズ NIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8 で撮影。いわゆる“オールドレンズ”と呼ばれる部類のものだが、状態がかなり良いレンズのようで、古くても細部は解像しているし非常によい描写をしてくれるから驚く。確かに古いレンズはコーティング等、現代のレンズに比べて明らかに劣る点はあるものの、これだけの描写をしてくれるなら私としては申し分無く必要十分である。

Nikon Df:NIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8:ISO100 f8 1/200

Nikon Df:NIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8:ISO100 f2.8 1/1250

しかし、やはり開放f2.8ではシチュエーションによっては周辺光量落ちが顕著に見られる。それも含めて写真の趣として捉えるか、絞り込みや現像時の補正で対処するかは被写体次第であろう。周辺光量落ちを絶対的なマイナス点だとは、私は考えていない。

もうひとつの発見は、ULTRON 40mmのポテンシャルである。

Dfを使うまでは、ずっとDX機のみで使っていたこのレンズであるが、自分が知っていた以上に性能が高いものであったようで、Dfのフルサイズでその描写能力の高さを思う存分発揮してくれている。これには、Dfの豊かな階調表現力も相乗効果として機能しているのだろうが、より一層このレンズが好きになった。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO100 f5.6 1/320

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO100 f2 1/1250

この日、似島では人懐っこい猫さんに会ったり、ヒトデさんのグロテスクさに驚愕したりもしたが、それはまた後編につづくことにしたい。

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