明るい満月をぼんやり眺めていると、それが宙の外からの光のように思えることがある。
極小の穴から射し込み、永劫に閉ざされているかのような冷たく黒い箱の中に全く突然に世界の拡がりを予感させる一筋の希望をもたらす。
フランシス・ベイコンは云う ─
“光が明るく輝くためには、闇の存在が不可欠である” と。
光の中にあって光は認識されず、或いは認識されたとしても有り余るほどに有って、故にひとつひとつの光はその価値が軽んじられてしまうか消滅してしまう。
闇。そこにこそ、認識の鍵がある。
認識するに値するものを認識するためには、闇に足を踏み入れることを恐れてはいけない。
闇の中に居るからこそ認識できる光というものが確かにあるのだ。