kishin 貴真

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20180317

/ART

BUCK-TICK〈No.0〉で到達した世界

BUCK-TICK No.0

もう、ずぅ〜〜〜っと聴いているアーティストのひとつがBUCK-TCIK
彼らが30周年の節目に完成させた21枚目のオリジナルアルバムが《No.0》。

amazonで予約しておいたのだが、フラゲどころかまさかの発売日にも手元に届かない事態にあって、冷静に「まぁ、あと数日くらい落ち着いて待とうじゃないか。」と思えたことに、ちょっと大人になった気がした。

発売から数日遅れで到着した〈No.0〉。
絶対に作り込んでいるはずなので、iTunesに取り込んですぐにMacの非力なスピーカーで再生するようなことはせずに、まずはきちんとヘッドホンを準備して深呼吸。濃いコーヒーにモンブランとシュークリームをひとつずつ食べてカフェイン&ブドウ糖摂取で脳をピクッとさせてから、気持ちを落ち着かせて最大音量で聴き始めた。

1分近く続くSEで期待感を煽る幕開けからの、『零式13型「愛」』の長いイントロへと続く。
※ “なんだよそのタイトル…”と心の中で呟くのは批判ではなく愛だ。

そこからはもう、圧倒的な音圧と音質。作り込まれた音 音 音。相変わらず一筋縄ではいかないメロディ、なのに耳に残るメロディ。そして、情景が目に浮かぶような幻想的な詩世界があるかと思えば、字面だけを見たら文字化けかと思うような歌詞もあったりと、本気で仕上げてきた感200%の名盤であることは間違いない。

どんどん〈No.0〉の世界に引き込んでいく#1〜#4の展開は見事。

#5〜#7の、星野英彦による作曲となる3曲はここ最近の星野氏の方向性を更に押し進めたような、少々難解な音感覚や強烈な疾走感と浮遊感が心地よく、今井氏の天才ぶりに影に隠れがちだが、やはり星野氏もまた今井氏とは異なるタイプのもうひとりの天才的な感性を持っていることを改めて感じさせる。

#8〜#10の、作詞作曲:今井寿の3連発は、R-18だと思う。
卑猥な表現があるという意味ではなく、あまりにも一般概念の枠を無視した展開であるため、衝撃が強すぎて危険性・中毒性が高い。生温い音楽しか聴いてこなかった人にこの3曲を聴かせた時の表情を隠し撮りして見てみたいものだ。もし“自由”が身籠ったのなら、その子は“今井さん”と名付けようと思う。

今作はエレクトロニカ要素が多めであることも相まってノリが良く疾っている感が強いので、#10まで一気に畳み掛けてくる印象。そこに#11でどっしりとした世界感で櫻井敦司が歌い上げる『BABEL』がくる。普通ならこの曲のフィニッシュの“ドォーーン”でアルバムが終わっても「おぉ〜」と納得のいく終幕になるように思うのだが〈No.0〉はそんなに甘くない。

さらに続く#12『ゲルニカの夜』で、人として忘れてはならない大切なことを胸を張って堂々と主張し、#13『胎内回帰』で前曲の感情を引き受けて締めながらも、同時に再び産み落とされるべく#1の「愛」のもとへと戻っていくような素晴らしすぎる構成となっている。

No.0の「0」は、ループであり始まりも終わりも無い永遠に周り続ける形状でもある。

BUCK-TICKの全アルバムを聴いてきたが、この作品ほどに曲順が洗練されていて、聴くときにシャッフルしたくないと感じさせる作品は初めてかもしれない。長年のファンであるというひいき目を勘定に入れても、これは伝説的かつ芸術的名盤だと思われる。これまでの30年のキャリア全てを注ぎ込んで磨き上げた、まさに“現時点”での最高傑作になっている。敢えて“現時点”と云ったのは、どうせこの方々は、これだけのものを創ってもなお満足などせずにズンズンズンズン先に進んでいくに決まっているからである。

BUCK-TICK 30th

BUCK-TICK ─ どこまでも凄まじいバンドである。

多くの人に聴いてほしい。
良質な音で聴いてほしい。
この名盤を愛してほしい。

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