kishin 貴真

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20160901

/ART

押し花絵の妙

巻本ヒロ子 押し花絵

横川に、展示替えの度に覗きに行っているギャラリーカフェ『カモメのばぁばぁ』がある。
ここは、毎月を前半後半に分けて作家などに貸し出しているレンタルギャラリーで、広いスペースとは云えないものの、毎回、多様なジャンルの作家が個展開催を行っていて相当に興味深い。

8月後半は、巻本ヒロ子さんが“押し花絵”の作品を展示していた。

“押し花”というと、散歩の途中で道端に咲いていた花をそっと持ち帰って、読みかけの本に挟んでおくといったような、自然や季節をひっそりと楽しむ些細な日常行為。そんなイメージしかなかったのだが、しっかりと構成されて額に収まった押し花絵の作品群を目にして、そうしたさらりとした軽い行為とは異なる、別の世界があることを知った。

制作過程について詳しくは分からないが、観察する限りでは、花や葉や茎を素材として、画面内で構成する一種のコラージュであり、そこにメッシュを用いて奥行きをさらに強調したり、模様やグラデーションのある布で背景空間の雰囲気を特徴づけたり、クッション性の高い生地を背景に置くことで圧迫による固定をしているようである。

巻本ヒロ子 押し花絵

それらの各素材は当然、物理的に立体であり、それが作品の重み・深み・趣に強く寄与していて、「絵」とは云ってもやはり絵画とははっきりと異なる要素である。そしてそれ以上に、自然物であるが故の個体の多様性、つまりは、ひとつひとつ異なる色や形の妙は、じっくりと観察していても見飽きることのない面白さを内在している。

展示されていた作品のうちのひとつに強く惹かれた。

白く愛らしいフランネルフラワーを主役として配置し、それにゴボウの花と人参の花を優しく添えている。更には、紗で物理的な奥行きを確保して、その向こうに薄っすらと霞むように他の草花を配置しており、全体的に安定しつつもふわりとした広がりを感じる構図と深み・色彩感が魅力的な作品である。

とても気に入ったので購入させていただいた。

素材が自然物なので当然であるのだが、やはり耐光性はなく、直射日光や反射光が当たるような場所に飾ると退色してしまうということなので、できるだけそういった悪影響が無いように考えながら、自室での作品鑑賞を楽しんでみたいと思う。同時に、そうした経年劣化=アンティーク化する過程も含めて楽しむことができるのが押し花絵の特徴のひとつでもあると思うので、その点も時間の流れとともにゆったりと眺めていきたい。

今回の展で“押し花絵”というスタイルがあることを初めて知ったのだが、ちょっと調べてみるとなかなかに奥深い世界でもあるようなので、機会があれば是非とも、もっと大きく大胆な作品なども見ることができればと思う。

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