kishin 貴真

20170223

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可変式NDフィルターを試す

長時間露光撮影

撮影現場での環境光の量を調節することのできるNDフィルターは便利だ。
特に長時間露光撮影では必須アイテムとなるのだが、NDフィルターは目的とする調節量によってND2〜ND100000の範囲で数種類が存在しているので、全種を確保したり撮影時に持ち歩いたりするのは少々大変でもある。

そこで気になっていたのが《可変式NDフィルター》の存在。

2枚のフィルターが重なった状態になっており、回転させて2枚が重なりあう回転角を変化させることで、フィルターの遮光濃度が無段階に変化する特殊な構造となっている。数年前から存在しているものの、登場した当初は、「濃度にムラがある」「格子模様が出る」「画質の劣化が著しい」などの理由から、ほぼ「使いものにならない」という意見で一致していた為、試そうとも思わなかった。

marumi DHG Vari. ND2-ND400

しかし、最近の製品評価を見ると、必ずしもゴミ扱いとなっている訳ではなく、使い方によっては実用的に用いることが可能といえるレベルにまで製品品質が上がってきているような印象も見受けられるようになってきたため、試しにひとつ購入してみた。購入したのは《marumi DHG Vari. ND2-ND400》という並行輸入品で、日本国内では正式には取り扱われていない製品。

製品名からも分かる通り、仕様としてはND2からND400までの濃度を無段階で切り替えて使用できる可変式NDフィルターとなる。

marumi DHG Vari. ND2-ND400

実物を見ると、フィルター枠の外周に目盛りや目印の▲がプリントされており、現在どの位置に設定しているのかを確認できるようになっている。しかし、取扱説明書等は付属してはおらず、目盛りが付いているとはいえ、具体的に何段暗くなっているのか数値では分からない状態なので、自分で実際に撮影することで、各目盛りごとの遮光量を確認する必要があった。その結果を参考までに掲載しておく。

上記の仕様確認では、絞りは固定で、SSとISOを変えて2回計測した。これは厳密に行ったものではないので参考程度にとらえて欲しいのだが、“目盛りをひとつ動かすと1段落ちる”というような分かりやすい仕様となっている訳ではないので、使用時にはテスト撮影をしながら露出を決定するか、細かいことは気にせずに感覚で使い、RAW現像時に適正露出に調整するという使い方になりそうだ。

品質としてはどうだろうか。

4段落とすND16程度の濃度で使用する分には意外にも大きな問題はなく実用レベルにあると思われる。
ただ、仕様としてはND2始まりのはずなのだが、計測ではそれよりも暗いND3程度になってしまう点は気になる。それで問題なければ、ND4、ND8、ND16といった複数枚のNDフィルターをこの1枚で置き換えるという選択肢もアリかもしれない。

一方、ND100を超える高濃度で使用してみると顕著な問題が出てくる。

まず、黄緑系の色かぶりがハッキリと見られる。
この点はよろしくはないのだが、デジタルで使用する場合には、ホワイトバランスの設定やRAW現像時の調整でほぼ対応可能なのでそんなに大きな問題とは考えていない。

それよりもずっと問題なのが、高濃度になるに従い周辺光量が急激に低下するという症状だ。

しかも、一般的にレンズでよく見られる周辺光量の低下の仕方は円形に暗くなるものだが、この可変式NDフィルターの場合には2方向から線形に低下するため、RAW現像ソフトなどの周辺光量の調整機能(円形を前提としているもの)では対応しづらいような光量の低下の仕方になっている点が厳しい。

この周辺光量の低下は、ND100前後では場合によっては許容範囲とできる程度なのだが、MaxのND400では実用範囲外とせざるを得ないかなり重度な症状となってしまうため、NDフィルターとして事実上使える範囲はND3〜ND100までと認識しておく必要がある。可変ではないND400フィルターを使用した画像と比較すれば、その周辺光量の低下の仕方は一目瞭然である。

ND400フィルター

比較に使用したNDフィルター《Kenko ND400 PROFESSIONAL》はさすがの品質で、色味の変化もなく純粋に光量だけを抑えてくれる。というか、それが本来の“NDフィルター”のあり方なのだが…それに対して、可変式NDフィルターの方は、見ての通り問題が発生している。

なお、このmarumiのフィルターの場合、周辺光量の落ち方はフィルターの装着角度によってどの方向から光量が落ちるのかが決まっているため、レンズに装着されているフィルター全体を回転させることでその変化の方向をコントロールすることは可能だということを付け加えておこう。

marumi DHG Vari. ND2-ND400

可変式NDフィルターを実際に使ってみた総評としては、薄い濃度での使用を前提としているなら手を出しても良い頃合いだといえそうだ。しかし、長時間露光撮影のように高濃度での使用を前提とするなら、また露光時間を計算で算出する必要があるなら、現時点では素直に固定濃度の高品質なNDフィルターを使う方が幸せになれるだろう。

回転させるだけで濃度が変化する可変式という発想は面白いし興味深いのだが、現在のような2枚のフィルターの回転角で濃度が変化するような仕様を採用しているうちは、どんなに製造品質が向上しても、物理構造上、上記のような問題が発生することは避けられないように思われる。

こうした問題を解決するには、回転角に頼らずに1枚で濃度変化が可能となる仕組みを採用する必要があるだろう。例えば、電気を流すことで透明/不透明を切り替えることができるガラスはすでに存在しているが、そうした技術の応用で、電力によって透過光量調節ができる全く新しいタイプの《可変式NDフィルター》が登場したなら、露光のコントロールはもっと簡単に的確に行えるようになるだろう。

【追記】
動画カメラ用では既に、カメラ本体とレンズの間に挟むかたちで使用するマウントアダプタタイプの《電子式可変NDフィルター》が製品化されているようなので、こうした製品が一眼レフの世界に流入してくるのも時間の問題だろうか。しかし、動画ではなく写真の場合のNDフィルターの需用の絶対数を鑑みると、商品化されるとしても高価なモノになってしまう懸念はある。

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