
紙の本を読むのが好きだ。物語というものが好きなので文学はもちろんのこと、哲学書や自然科学や歴史や技術・産業関連、図版の多い美術書など、興味があるものに関してだけではなく、今まで興味がなかったジャンルのものも書棚にずらりと並ぶ背表紙をなんとなく眺めながら書棚の間を散歩しつつピンと来たものを手に取って読んでみることも多い。
現在の私の書棚には約40万冊という蔵書があるので選び放題だ。
昔は読む本は書店で購入して読んでいたのだが、増え続ける本の多さが引っ越しの度にダンボール箱の数に直結していて大変だった為、ほぼ全てを断捨離して、今では住んでいる街の図書館を「私の書棚」として活用している。生活スペースが本で圧迫されることもなくなり、出費も無くなるけれど、読書の愉しみを失うことはないオススメの方法である。
それでも数冊は手元にあって、繰り返し読んでいる本もある。
特によく持ち出す本がくたびれてきており「それも味か」として気にしないようにしていたのだが、良さそうなブックカバーを見つけたので使ってみることにした。

上質なイタリアンレザーを使用したUNROOFのブックカバー〈「あらゆる厚みに対応できる」本革ブックカバー/Pueblo〉である。ネット上で見る限り質感は上々で、構造も注目に値すると感じて使ってみたくなった。
色は数色用意されている内、ターコイズの『オルテンシア』とワインレッドの『モスト』で迷ったのだが、使用しているスマホがレッドなので同系色でまとめて『モスト』を選択した。なお『モスト』とは、ワインになる前の「搾りたてのぶどう果汁」を意味するイタリア語とのこと。

実物の質感や手触りはとてもよく、手に馴染む感じやしっかりとしたコバ処理や縫製からも長く愛用できそうな印象。色合いに関しても、とても深みがあって魅力的だ。

特筆すべきは構造で、よくある革製ブックカバーのように一枚布を折り曲げて本に巻き付けるような構造ではなく、2ピースに分かれる構造で本を包むもの。どんな厚さの本にも対応できるようにしたいというコンセプトによって生み出されたというこの構造は、結果として使用時の読みやすさや美しさにも貢献しているように思われる。

UNROOFというブランドの思想もとても素晴らしいと思う。
職人たちがこだわって丁寧に作業をした結果としての製品は、まだ使い始めて間も無い状態でも既に愛着が湧いてしまうほどに魅力的な逸品になっていると感じる。それゆえに、手元に届いて梱包を解いた時に感じた “製品以外の雑さ” が、尚の事、勿体無いなぁと感じた。

ブックカバーは茶色の不織布製の小袋に入っていたのだが、入れ口の折り目がテキトーで斜めになっていて留めテープの貼り方も美しいとは云えず、そもそも粘着力が足りないテープのため剥がれていたし‥。同梱の印刷物は超低価格の中国などの印刷工場に依頼しているのか、例えばブランドロゴが印字されたカードはかなり低品質な印刷で版ズレしており、印刷データの作り方に問題がある(塗り足しが無い)のか、右と下部分だけインクが乗っていない白紙が出ている。4色刷りのチラシも肉眼で見て分かるくらいにシアンとイエローの版がズレていて低品質感がものすごい。こんな状態の印刷物にどんな写真や言葉を載せてみたところで説得力は無くなってしまう。
ビジネスなのでコストを考えないとならないのは分かるが、製品自体は高品質であるのに、それと一緒に手元に届くこうした周辺の物たちが低品質だとやはりバランスが悪いと感じてしまう。ブランディングを考える時、重要なキーワードが「4P」から「4E」にシフトしてきているというのが昨今の流れであり、つまりは優良な「Product(製品)」を作るだけではなく、その製品を含めた総合的な「Experience(体験)」の質を向上させることが非常に重要な時代に突入している。その視点で考えると、商品として手元に届いた時というタッチポイントで購入者が感じ取る印象は無視してはならないと思う。

製品がとても魅力的だからこそ、その魅力を自分たちで削いでしまっている点が気になってしまいもしたが、やはりこのUNROOFのブックカバーが今後、お気に入りの一冊を持ち歩く際の善き美しき相棒になってくれることは間違いないと確信している。革製なので今後の経年変化も味わいつつ「紙の本を読む心地よさ」をこれからも大切にしていきたいと思っている。