kishin 貴真

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20230212

/FOODSOTHERS

江田島でゆっくり過ごす

Nikon Df:NIKKOR-S Auto 55mm F1.2:ISO100 f4 1/500

ここ最近、HTMLコーディングを長時間続ける日が多くてさすがに眼に重さを感じていたので、天気の良い土曜日に、眼の焦点を遠くに投げられるように一日屋外で過ごしてみることにした。

宇品港からフェリーに乗って30分ほどで到着する切串港、江田島である。
昔からフェリーは本当に好きで、飛行機で海外に行くよりも、フェリーでちょっと近場に行く方が何故か “旅” を感じる。海の存在が近くて、それを超えていく感覚がダイレクトに伝わってくるからだろうか。

何度も訪れているが、この日の目的はゆっくりと眼を癒すことなので、特に大きな目的もなく気ままに夕刻まで散策しようと考えていた。相棒はもちろんSTRiDAである。

Nikon Df:NIKKOR-S Auto 55mm F1.2:ISO100 f2 1/640

いくつかの神社のそばを通るたびに立ち寄り、社殿内や境内を興味深く見てまわったりする。

Nikon Df:NIKKOR-S Auto 55mm F1.2:ISO800 f2 1/200

おかめや般若の面があったり、馬や龍、何らかの武将のような絵を掛けてあるところが多いのでそれらを見てみるのだがいつも結局はよく分からないまま「なるほどね」と呟いてみたりする。

きっと色々な由縁があるのだろうがそれよりも、神社は何らかの結界の内側にいるような、何かに護られているようなそんな雰囲気を感じて一息つく場所だと思っているので、それでいい。

ぶらぶらしているうちにお腹が空いたので、事前に見つけておいた場所に行って昼食にする。

《海辺の新鮮市場》に到着したのは開店2分前でちょうどよかった。すでに7人ほどが並んでいたのでその列に加わる。カキフライにも心惹かれたが、この日は刺身としらす丼の定食を選んでみた。ここは自分でお盆を持っていろいろな器をゲットしていく給食スタイルとなっている。

もろもろのアイテムを入手し、ようやく窓際の席について「いただきます」という頃には店内は早くも満席に近い状態になっていた。ずいぶんと人気のお店らしい。刺身もしらす丼も美味しくて正解だった。この季節、あら汁の旨さが本当に身に染みて有難い。

食後に熱いお茶をゆっくり一服してから店をあとにする。

Nikon Df:NIKKOR-S Auto 55mm F1.2:ISO100 f4 1/400

ここ数日は気温も上がってきており、これから日に々々春に近づいていくのを感じるだろう。

珈琲豆が切れかけていたので、初めて訪れた《Coffee Roast Sereno》で、豊富な種類の豆の中からお薦めを聞いて『イルガチェフ』と『修道院のコーヒー』を200gずつ焙煎してもらった。焙煎を待つ間に珈琲を一杯いただけるのだが、それも香り豊かでちょっと冷めても嫌な酸味が出てくることもなくかなり透明感を感じる美味しい珈琲だった。豆が良くて焙煎も適切で、且つ淹れ方にも熟達していないとこうはならない、ということが分かる程度には珈琲好きである。

買ってきた豆もここ数年で一番美味しかった。やはり、美味しい珈琲で始まる一日は豊かだ。
江田島に行ったら必ず立ち寄る店確定である。

明るく天気の良い江田島内をストライダでゆっくりと走り、よいリフレッシュになったので、そろそろ切串港に向かうことにする。その道中、道端に立ててあった看板を視界の隅っこは見逃さなかった。一旦はスルーして50mほど走ったがやはり気になったので引き返した。

気になるじゃないか、こんなの。

とはいえ、道路に面した側からは店舗らしきものは見えず、回り込むと静かに品よく揺れる暖簾があった。控えめにある店名は『長田製菓舗』。

店内に入るとすぐに菓子の並んだショーケースがあり、その上には大胆に苺を乗せた串団子が紹介されていた。チラと店内の奥を覗くとイートインできそうだったのでお店の方に確認してから、店内で団子をいただいていくことにした。

こし餡と苺の串団子、そしてこし餡だけの串団子、それにお抹茶を注文。

Nikon Df:NIKKOR-S Auto 55mm F1.2:ISO100 f2 1/640

イートインスペースは西向きにひらけた大きめの窓のある一角で、きっと夕陽が綺麗に見えるだろう明るく気分の良い空間になっていた。ごちゃごちゃと装飾をせずに美しく保っているところも私的にはとても居心地がよかった。

Nikon Df:NIKKOR-S Auto 55mm F1.2:ISO100 f2.8 1/400

少し待ってお団子とお抹茶が到着。苺が乗ったこし餡串団子は、苺の重力でくるりと回転して崩れそうになるので食べるのが難しかったが、透明のフィルムを駆使していただいた。それが、ちょっと感動してしまうくらいに団子がやわやわで本当に美味しかった。シンプルなこし餡団子もまたちょうど良い甘さのこし餡と団子の旨さとのバランスが絶妙で、幸福至極なひと時であった。

偶然目にした看板に惹かれて入ったお店での幸せ。
車やバイクのスピードではきっとあの看板は見逃すだろう。徒歩や自転車の低速は必ずしも悪いことばかりではないのだ、ということを知っているのは、世界を発見したり見逃さないためには想像以上にずっと価値のあることだと私は常々感じている。“ゆっくり” は悪くないのだ。

Nikon Df:NIKKOR-S Auto 55mm F1.2:ISO200 f5.6 1/250

夕刻16時過ぎ、切串港に到着した頃、太陽は早々に一日を終わらせようと躍起になっている厚い雲に包まれて気温も下がってきていた。港ではちょうどフェリーが出発しようとうずうずしながら停泊中だったので乗船券は船内で買うことにしてそのまま流れるように乗り込んだ。

良い一日だったなぁ、次はどの珈琲豆にしようかなぁ、あのお団子を食べるならまた土曜日に来なくちゃな、そんなことを考えながら宇品港にゆっくりと向かうフェリーの中で刻々と変化する夕景をぼんやりと眺めていた。

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