kishin 貴真

20210516

/OTHERS

スズメスペシャル

買い物の帰りにちょっと天気が良ければ、眼の休養と室内型生物に陥りそうな昨今においての空間感覚の回復のために、どこでも良いので広い屋外で暫しの休憩をとるようにしている。

軽くパンでも齧っていると、視線を感じる。
この「視線を感じる」という能力は実に興味深い感覚で現代の科学や五感というものでは到底説明のつかないもの。しかし確かに存在し機能している能力であることは大抵の人の認めるところであろう。

こういう状況で視線を感じる時はほぼ間違いなく私は狙われている。
正確に言えば私のイチゴスペシャルが狙われている。

試しに小さくちぎって、ぽーーーんと飛ばすと、案の定チピチピチピとスズメが2~3羽降ってきてはちょいと咥えて去っていく。ゲットできなかった子は、こちらを見て「もう一個投げるよね?ね?」と言わんばかり。ごはん食べたい→あいつごはん持ってる→くれるなら貰う。
行動原理が実に明快である。小さい鳥類は持続的な発熱が必要であるから、生きるために食べ、食べるために生きるというシンプルな仕組みになるのだろう。

けれど、スズメは基本的にはとても警戒心の強い鳥なので人が近づけば逃げるのが普通。しかし、その警戒心の強さは生息している環境・場所によって多少異なり3mくらいの距離で逃げる場合もあれば、50cmくらいまでは近づかせてくれる場合もある。

という基本的なことを理解しつつスズメを愛でるのが好きなのだが、先日偶然見つけた近所の公園にいるスズメは警戒心がかなり弱く人間慣れしているようで非常に驚いた。ベンチに座っていると、背もたれや肘掛けのところに多少ビクビクしつつも近づいてくる。試しにそぉぅっと手渡しでイチゴスペシャルを差し出してみるとカプッと食べてくれたのはかなり感動した。

まさか、野良のスズメに手渡しで餌を与えられる日が来るとは。

しかも、この子が特別警戒心が弱い個体という訳ではなく、この周辺のスズメは割と勇敢な子が多いようで、手渡しで与えていると我も我もと次々に食べに飛んでくる。行列の出来るラーメン屋の店主はきっとこんな気分なんだろうなと思いながら、様々な個性を持ったスズメ達を観察した。

前の子が食べるのを行儀よく待っている子、身体がぶつかって喧嘩を始める子、咥えたらすぐ飛び去って安全な所で食べる子、逆にその場でモリモリ食べる子、出来るだけ口いっぱいに頬張る子、ちょっと臆病で2歩近づいては1歩下がるを繰り返す子、くれるまで目を見てチピチピ言い続ける子、着地もせずにホバリングしたままつついて去っていく子、早々に満腹になって羽繕いを始める子。

こういう個性豊かなスズメ達を見ていると、竹内栖鳳が生き生きとした雀の絵を好んで描いたのも頷ける。観察すればするほどに実に魅力的な者たちなのである。

今年は随分と早く梅雨入りしてしまったため、当分は屋外ベンチで陽光を受けてのんびり過ごすこともできなくなりそうで残念だが、梅雨が明けたらまたスズメスペシャルをやりに行きたい。

Twitter