kishin 貴真

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20191208

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STRiDAで松山・道後へ Ⅲ

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO200 f2.8 1/500

この日は朝から空腹にしておいた。その理由は、松山で有名な鍋焼うどんの店『アサヒ』と『ことり』をハシゴするためである。ちょうど10時頃銀天街に着き、開店直後にまずはアサヒに入る。

メニューはシンプルで、鍋焼うどん/鍋焼うどん卵入り/いなり1個・2個。

ということで、鍋焼うどん卵入りといなりを1個注文した。数分後に可愛らしい小さなアルミ鍋で熱々のうどんが提供される。レンゲでスープを口にする。事前の情報として「甘い」というのを知ってはいたが想像以上に甘い。しかし、イヤな甘さではなく優しくも味わい深い深みのある甘さでどんどん箸が進んでしまう。ちょっと口の中が熱くなったら、冷たいいなりでリセットするのがまた心地よい。ずずぃと最後のひとしずくまで平らげる。クセになる甘さ旨さはちょっと衝撃で、なるほど有名になるのも頷ける一品であった。これは完全に気に入った。

鍋焼うどんの店をハシゴしようと思っていたのだが、思いの外お腹いっぱいになってしまったので、ちょっと時間をおくことにして、愛媛県美術館でコレクション展を鑑賞することにした。STRiDAが居てくれるおかげで、こういうちょっとした動きの変更も余裕で対応してくれる。良き相棒だ。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO200 f2.8 1/200

1時間ほど後、銀天街に戻り、もうひとつの鍋焼うどんの店『ことり』に入店。
メニューは更にシンプルで鍋焼うどん卵入りの表示は無いが「卵を入れることは出来ます」と別の客に説明しているのが聞こえてきた。しかし今度はシンプルに鍋焼うどんを注文した。ちなみに両店ともに、うどんの提供と同時に支払いを済ませるシステムになっている。うどんを運ぶ→同時に代金を回収→食後に改めて対応する必要が無い、という効率的なやり方である。だから、おつりの無いように用意しておくのが通らしい。地元の人はそれを知っているのでうどんが来る前にカチャカチャと小銭の準備を始めていた。

この日2杯目の鍋焼うどんが来た。
レンゲでスープを口にする。アサヒとは明らかに違う味わい。こちらは鰹が前面に出ていて一般的なうどんつゆと大きな差は感じられず、少々甘めの味付けという印象であった。しかしこちらもまた美味い。

「アサヒ」か「ことり」か。関東や関西でのうどんの味からあまりにかけ離れているのはイヤだという向きには「ことり」がオススメだろうし、せっかく松山に来たのならここでしか味わえない地元に愛される味を楽しみたいなら「アサヒ」がオススメだろう。これは完全に好みの問題だが、私は強い甘さを見事に旨さに結びつけていて衝撃的だったので、アサヒ派として生きていくことにする。

Nikon Df:NIKKOR-N・C Auto 24mm F2.8:ISO400 f8 1/1000

すっかりお腹いっぱいになったところで少し遠出をする。
前日は奥に行ったので、この日は東に行く。目的地は『東道後のそらともり』という、天然温泉/岩盤浴/サウナ/エステ/レストランなどが利用できる総合施設である。ここの湯は、他の道後の湯とは異なり、ぬるっと感があって「美肌の湯」として知られているらしい。

Nikon Df:Voigtländer ULTRON 40mm F2 SLII Aspherical:ISO200 f5.6 1/1000

松山滞在中は幸いにも天候に恵まれたので、この日も気持ちよくSTRiDAを走らせる。
途中、方角を勘違いして逆方向にしばらく走ってしまうという事がありつつも小一時間で到着したのだが、奥道後といいこの東道後といい、外観の鄙びた感は何なのだろう? 館内やWebサイトは手をかけているのに、通りからの外観の印象が酷いというのが道後郊外の流儀なのだろうか。謎である。

ここでは、噂通りのヌメりのある湯と岩盤浴やロウリュを楽しんだ。岩盤浴は温度設定が低いのか、全然汗が出なかったのは残念なところだが、その分、久しぶりのロウリュで汗が噴き出してきたのでプラマイゼロということにしよう。泉質はどっしりとしていて良かったし、44℃超えの「あつ湯」もガツンと躰に効いて良かった。

すっかり長居をして施設を後にする頃には辺りは真っ暗になっていた。

この日、夕食を食べに行きたいと気になっていた「和風肴家 渡部」という店に向かい暖簾をくぐるも、残念ながら予約で満席ということで諦めた。さてどうしたものかと考えていると、初日に不味いかき揚げに出くわした悔しさを思い出して無性に美味しい天婦羅が食べたくなったので、店を探して寒空を彷徨うことにした。大丈夫、躰の芯はまだ熱い。

Nikon Df:Kenko MC SOFT 45mm F4.5:ISO6400 f5.6 1/100

天婦羅ならやはり市街地にある新しい店よりも、ちょっと市街地から距離があって老舗的な長年淡々と続けているような店の方が信頼できるよなぁと思い、寒空の中、年季の入ってそうな店があることを信じて探す。明るく光る『お食事処 天ぷら 天くに』の看板を見つけた時は「ほぅら、やっぱりあった」と勝者の気分になった。湯神社の神様が願いを叶えてくれたのかもしれない。外観からして探していた渋い雰囲気そのものである。戸を開けて入ると店内もお店の方も良い意味で年季が入っていて食べる前から美味しいのがわかった。夕食時でも定食が食べられるようだったので、キス天を定食で注文して待つ。他の客は地元の方だろうか、馴染みの店でまったり過ごしている感じがこの店の料理の旨さと居心地の良さを物語っている。

しばらくして出てきたキス天定食。ふっくらとしたキス天が4尾に、玉葱・茄子その他大振りの野菜天婦羅もあってなかなかの盛付けに思わずニヤニヤが止まらなかった。熱々のキス天を口にする。衣は軽くさっくりで中はふかふかじゅわ…格別に美味い天婦羅である。誠実に職人仕事をしているのが味に現れている。ここの見事な天婦羅をいただいて、初日の悔しさはすっかり消えて無くなった。ボリューム感のある天婦羅定食ですっかり気持ちまで満たされて、お会計をすると「本当にそれでいいの?」と思うほど安くて、今だに信じ難いものがある。あのレベルの天婦羅定食を良心的な値段で食べさせてくれる店は探して見つかるものではない。『天くに』どこまでも誠実な天婦羅屋さんである。

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