kishin 貴真

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20181016

/ART

立花英久の塑像

立花英久 塑像

珈琲が好きで色々な自家焙煎のお店の豆を試している。
ここ数年は段原にあるスペシャルティコーヒー専門店green coffeeのマンデリンを愛飲している。

先日もマンデリンを買いに行った。
支払いの際、ふと目に止まったのが、店内にそっと置かれた一枚のDM。

見覚えのある塑像が写っている。

以前、ANCHORETで観た展示はとても魅力的で脳裏に焼きついていたので、すぐにそれと分かった。立花英久氏の塑像だ。「また展示をするのかな」とDMを手に取ってみるとやはりそうであった。場所も以前観た時と同じ場所である。10月13日〜21日という短い期間ではあるが、必ず時間をとって観に行こう決めた。

展示三日目に時間がとれたので足を運ぶ。

ANCHORETの空間は相変わらず無用な装飾が無く、静かでいて穏やかでほんのりとした心地よい光と空気が漂っている、そんないい空間である。それ故に、ふらりと気軽に立ち寄ってみようとはなりにくいちょっと敷居の高さを感じさせる特別感もあるのだが、そこに立花英久氏の塑像は実によく似合う。

店内のあちらこちらに十分な空間をとって点々と展示されている塑像をじっくりと観て周る。
立像、半身像がひとつひとつ異なる表情で佇んでいる。足を抱えて座っている者もいる。
こうした、簡単には解明できない作品をじっくりと観察する時間はとても豊かで贅沢に思える。
しかしいくら観ても解明しきることはできないということも分かっている。それもまた体験の奥行きを深めてくれる要素としてとても愉快だ。

そうして観ていく中で、⑱の半身像が私の感性にピタリとはまった。素晴らしい。
特に胸部よりも下からの目線で観た時の首筋から頭部への光の流れ方が時を忘れさせてくれる美しさ。

こうした展示では大抵の場合、全ての作品が一様に素晴らしいということはまず無く、ひとつか多くてもふたつの強い光を放つようなものと出会えれば幸運である、というのが経験上のパターンだ。無論それは、観者の主観に拠るところであるから人によってどの作品に格別な強い魅力を感じるかは異なってくる。

⑱という番号の横に銀色の丸いシールが貼ってある ─ 『売約済み』の目印。
「またか」と思った。以前、展示を観た際にも、最も魅力的だと感じた作品はやはり売約済みであり購入することは叶わなかった。これで二連敗となる。立花英久氏の塑像に手が届くのはまた当分先になってしまった。

名残惜しくもう一度、じっくりと⑱の半身像を堪能し、次の機会こそは初日の展示開始時間に訪れることにしようと決めてANCHORETを後にした。

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