kishin 貴真

Instagram
20160602

/PHOTOGRAPH

弥山の光・奥の院の空気感

宮島 仔鹿

久しぶりに、宮島・弥山に登った。

過去に何度か登っているが、今までは全て大聖院コースを利用していた。
弥山登山には主に3コースが用意されていて、初心者向けの『紅葉谷コース』、石段が多く景色の良い『大聖院コース』、そして弥山原始林を抜けて行く『大元コース』があるが、今までは別段理由もなく大聖院コースを利用していたので、今回は他の2コースを使ってみることに決めていた。

往路は紅葉谷コースでサクッと登頂して休憩をとったのち、復路は奥の院に寄ってからの駒ヶ林〜大元コースというちょっと長めの散策プランを実行してみた。

この季節の宮島には、鹿さんの他に、仔鹿さんも沢山いて可愛い。まだまだ人間に慣れきっていないのか、レンズを向けると軽くビクッとして少々緊張しているのが伝わってくるので、あまり近づきすぎないように距離をとってマクロで撮影してみる。

Ai AF Zoom Nikkor 28-105mm F3.5-4.5D

今回は『Ai AF Zoom Nikkor 28-105mm F3.5-4.5D』という古めのレンズを持っていった。昨年あたりに中古店にて安価で購入したレンズだが、50-105mmの間でマクロ撮影ができるちょっと面白いレンズで、昨今のレンズのようなクリアさやシャープさは期待できないものの、なかなか個性的な写りをするので撮っていて楽しいレンズとして気に入っている。

宮島 赤いベンチ

宮島に訪れたことがある人ならきっと一度は目にしているであろう赤いベンチの前を通って紅葉谷コースの登山口へと向かう。この日はとても気持ちの良い暖かい日差しで絶好の登山日和だった。

紅葉谷コースは、苔生した箇所が多く、陰と日差しと苔の緑とのコントラストが魅力的で、目の保養には良いコースであった。せっかくの気候なので焦らずゆっくりと歩みを進めながら、道端の草花や苔や虫などを観察しつつ、マクロやモノクロを切り替えてはじっくりと撮影を楽しんでいたのだが、気がつけば山頂付近にまで到達していた。紅葉谷コースは想像以上に易しい。

宮島 弥山 苔

宮島 弥山

山頂の展望台で昼食をとってから、小一時間程ゆっくりと本を読みながら休憩。
その後、ちょっと移動して鯨岩からの景色を空気遠近法を実感しながらたっぷりと吸収してから、まだ行ったことがなかった奥の院と駒ヶ林山頂に向かった。弥山山頂で十分に休憩をとってから向かったので特に問題はなかったが、この道程は結構アップダウンがあるため、体力に自信がない人は往路の元気な内に行ってしまった方が良いだろう。

奥の院へと向かう林道では大きな蜂がゆくてを塞いでおり立ち往生してしまった。
体長3cmほどもある蜂が “ぶぅうぅん” と音をたてている状況下では、人間に出来ることなど何もない。
距離をとってしばらく待ち、更に待ち、相当待ってからようやく蜂の姿が見えなくなった頃を見計らって、その場所を一気に駆け抜けた。蜂は本当に嫌い怖い恐ろしい。

この道の人気の無さを象徴するようにどっさりと枯れ葉に埋もれた林道を抜けてひらけたその場所『奥の院』には人は誰もおらず、ただただひっそりと霊験あらたかな雰囲気が其処彼処に漂っているような独特の気配が興味深かった。

弥山 奥の院

小川のせせらぎと小鳥たちのさえずりを聞きながら、そこに響いてくる鶯の美声が何とも心地よく、しばし立ち尽くして聞き入った。何があるということもない場所なので人もあまり来ないのだろうが、その何もない感が故に深みがあり魅惑的な場所として成立している。

奥の院を後にして、この日の最後の目的地である駒ヶ林山頂に向かう。

ここは、大きくて広々とした岩の上からひらけた景色を堪能できる気持ちの良い場所で、快晴だった当日は本当に爽やかな気持ちにさせてくれた。弥山山頂とは違う魅力があり、人工の展望台などが無い分、より自然な状態でのワイルド感漂う山頂の雰囲気を呈している。初めて訪れたが、私は弥山山頂よりもこの駒ヶ林山頂の方が好みだったので、次からはこちらを目指して登ってくることも多くなりそうだ。

下山には今まで使ったことのないもう一つのコース『大元コース』を使用してみた。天然記念物の弥山原始林を抜けるコースで少々クセが強い。落葉に道が覆われていて、気がつくと道ではない場所を歩いていたりもしたので、気を付けないと遭難しそうな気もする。特に陽が落ちて暗くなる時間帯にこの道を使うのは避けた方が良さそうだ。

宮島 弥山 苔

道中、“主”のような気配をビシビシ伝えてくる岩に遭ったのは良かった。
何てことのない苔生した岩なのだろうが、妙に惹きつけられる何かがあり、そういった説明のしようがない感覚を体験することこそ、自然の中に身を投じる楽しさであり価値でもある。ちょうど2年前に、目的地も決めずに自転車で知らない道をひた走っていたあの旅を思い出していた。

これからの季節はどんどん暑くなってくるので登山には厳しいかもしれないが、それでも気軽に登れるちょうど良い標高の弥山は魅力的なので、機会を作ってまた登りに行こうと思う。そして、夏を過ぎれば見事な紅葉を楽しめる季節も到来するのでそれもまた待ち遠しい。

Instagram