kishin 貴真

20160409

  /  THINK

いいかげんな情報

AdverTimes

『宣伝会議』が運営しているAdverTimesの中に『アドバタ会議』というものがある。

どういうものなのか見てみると、広告界で活躍する人々(素人)のブログ画面に『AdverTimes』のヘッダーを表示させて、あたかも『AdverTimes』自身が様々な情報を発信しているかのように見せかけるものらしい。

誰でも情報を発信できる時代になり、こういった手法は既に目新しいものではないが、けれどそこには常に重大な問題点が解決されないままに横たわっている。それは、情報の質の問題。

“情報”というものは発信すれば良いというものではない。

最重要なことは「正確性」であり、誤った情報は無価値なだけでなく有害である場合も少なくない。

そして「奥行き」も重要であり、ものごとを理解するためにはできる限りその背景に関することも知る必要がある。そこに踏み込まずに表面だけをなぞってしまうと往々にして誤解や思い込みといった無理解へとつながっていくことになる。

更には「想像力」も不可欠である。“ペンは剣より強し”とは、イギリスの劇作家エドワード・ブルワー=リットンの戯曲に登場する名高い言葉であるが、その表現が示す通り“言葉”には影響力があり、それを使う場合には無責任であってはならず、その言葉を使った結果それが刃になってしまうことが決してないように想像力と配慮をもって扱うべきものであることを教えてくれている。

AdverTimes アドバタ会議

言葉に於けるこれらの重要な要素が欠落した記事がAdverTimesで発信されていることを知った。
その記事には以下のような一文が投稿されている。

“「Metallic Ratio」は、すでに悪意を持つサイトになっています ”

「Metallic Ratio」とは、もちろん当サイト内にあるページのことである。それが、なんと名指しで「ウイルスを感染させる有害ページ」扱いされている。最初にその記事を見たときには眼を疑ったが、ちょっと調べてみると事情が理解できた。

『Metallic Ratio』は元々は別ドメインで運営しており、その後に、現状のように voidism.net 内での運用に移行している。そして、元々のドメインについては契約終了しており、既に私の管理下にはない。そのため、私が手放した後にその旧ドメインを取得した第三者によって「悪意を持つサイト」として運用されているということらしい。

ドメインとは、限られた資源でありリサイクル可能であるため、旧オーナーが手放せば、別の誰かが入手して自由に使うことができる仕組みとなっている。無論、新オーナーがどう使おうが、旧オーナーは手出しも口出しもできるものではない。完全に無関係となる。そういった仕組みが、時にこのような問題の火種となる。

名指しでこの類の情報を発信するなら、最低限この程度の事実確認と背景説明は必要であろう。

しかし、AdverTimesで発信されている記事には、こういった説明が一切無い上、件の有害なドメインを記すでもなく、現状の問題が無い方のドメインを記すでもなく、ただサイト名だけを記載してしまっていることで、まるで現状の『Metallic Ratio』ページが有害であるかのような印象を与えることになっている。運営者である私だからすぐに誤った情報だと判断できたが、単に『Metallic Ratio』を使ってくれているユーザーがその記事を読んだらどういう風に解釈してしまうだろうか…。そういったことに対する想像力も責任も無い非常に稚拙な“情報”となっている。

『宣伝会議』というある程度名の通ったメディアが発信する情報でさえ、こうした有害性と無責任さを孕んでいるのであるから、もはや情報に於いての信憑性の判断をネームバリューに依って行える時代ではないことが改めてはっきりと分かる一例となった。

問題の記事には、以下のような一文もある。

“ 半年以上前に更新されている情報は信用しないほうが良い ”

しかし、昨日投稿されたその記事自体にさえ問題があるのだから、私に言わせれば、

“ 有名な発信元の情報だからといって信用しないほうが良い ”

という結論になる。

情報の信憑性について啓発する趣旨の記事が、それ自身の信憑性を否定する記事になるとは皮肉な話である。言葉の扱い方を知らない者の書いた記事をまとめるだけで、検証も推敲もせずに発信することによる情報品質のバラつきと無責任さ、そしてそういった者に安易に自分達の看板を背負わせることのリスク。それこそが、こうした情報発信手法の解決し難い問題点である。

なお、この件に関しては『宣伝会議』に訂正と対応を要請しているので、反応があり次第、この場で改めてご報告させていただこうと思っている。本来であれば情報の発信前に、情報とは誠実に向き合ってもらいたいものであるのだが、それが無理ならせめて、事後くらいは誠実な対応を期待したいところである。

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