kishin 貴真

20160207

  /  ART

技法と体質顔料

油絵 体質顔料

少し前から今までとは異なる技法を試している。

ペインティングナイフのみを使った特殊な技法のため、筆で描く時と同じ絵具の練り具合では都合が悪く、そのため、絵具に粉末状の体質顔料を加えることでかなり硬めの練り具合に調整する必要がある。

体質顔料 … 炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪酸アルミニウムといった名称を見ると、なにやら科学実験のような雰囲気が漂い、理系だった自分としては無性にワクワクしてくるのだが、これらは白色の顔料として使用できるもので、白亜、石膏、アルミナホワイト、カオリンといったように、より馴染みやすい通称も持っている。また、黒色のものでは木炭を微粒子にした木炭精粉もあり、これを「体質顔料」の分類にして良いのかどうかは不明だが、同じような使い方ができる。

いくつか種類のある体質顔料と絵具を混ぜて、求めている硬さになるように練り、それらのサンプルを作っていく。いきなり作品に取り掛かるのではなく、まずは素材の性質を見極めるためにこうした下調べは重要で、その結果として、基底材にはカンヴァスが良いか木板が良いかの判断がつくこともあるし、使うべきペインティングナイフの大きさや材質が見えてきたりもする。いくつかの絵具はその性質上、そもそもこの技法には使えないことも分かった。

以前、ひろしま美術館で開催された『画家と愛用のパレット展』にアンリ・マティスのパレットとして展示されていたものがあり、それには色相ごとにいくつかの円形の絵具が並べてあって、あれはパレットではなくカラーサンプルだろうと思われる。マティスのそれを見た時には「いつの時代もやることは同じだなぁ」とちょっと嬉しい気持ちになった。

私の場合には、F3サイズのカンヴァスに、メーカー別に区分けした絵具の塗布サンプルを作ってある。そして新しい絵具を購入した時にはこのリストに追加していく。こうしたサンプルがあると、制作時に使いたい色を一目で見つけることができるので非常に効率が良くなる。油絵具は乾燥状態によって色味が微妙に変化するものが少なくないし、体質顔料を混ぜた場合には、艶が消えるものもあるため、作品制作時にすぐに確認できるようにこうしたサンプルを事前に用意しておくことは非常に役に立つことである。

また、体質顔料の分量とシッカチフ(乾燥促進剤)の分量の比率によっては、非常に簡単にヒビ割れが発生してしまうような組み合わせもあるので、そういった想定外のトラブルを作品上で被らないためにも扱う素材の特性や相性を見極めておく必要がある。逆に、そうした相性によるトラブルを想定した上で表現に活用するということも出来得る訳で、それは作家の発想次第でもある。

油絵 体質顔料

3枚のボールドカンヴァス上でいくつかの下調べが終わって、使うべき素材が見えた。
基底材には木材、体質顔料は石膏、ナイフはプラスティック製、油絵具は不透明のものという組み合わせが、今試している技法にはベストな選択となりそう。

これでようやく作品作りに取りかかれると云いたいところだが、この次の段階として、決めた素材を使って、いつも間違いなく適切な練り具合に練ることができるように、さらに実験を重ねて体得する必要がある。絵具はメーカーによって、チューブに入っている状態での硬さが異なるため、この辺りの見極めも実制作には必要な感覚となる。こうしたことが済めば、それでようやく作品に着手できるだろう。

興味は尽きない。

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