kishin 貴真

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20230927

/DESIGNOTHERS

木材にパウダープリント

自作ボードゲームの収納用木箱にゲーム名を表示したくて、その方法を考えた。業務用であれば相応の工具を使ったレーザー刻印や焼印などの方法も考えられるが、個人が手軽に使用できるものではない。そこで、見つけたQuick Artの《木材用パウダープリントシート》を使ってみた。

簡単に説明すると、特殊な転写シートにインクジェットプリンターで印刷すると、インクを乗せた部分が薄い樹脂膜のように変質し、そこに同梱のメルトパウダー=熱で溶ける粉末状の接着剤をまぶしてからアイロンで木材に圧着すると印刷されたものが転写される、という仕組みだ。

私の場合の、モノクロのロゴやマークなどを木材に印刷したいという用途には十分対応できそうなので試してみることにした。

まずは工程上、気になる点を確認するために何度かテストを行った。

❶転写シートに印刷したところを触っても問題無いのか?
→触ると擦れたりぼけたりするので印刷したところは触ってはダメ。定規を使って切り取る場合には定規で擦ってしまわないように慎重に扱う。

❷圧着する際のアイロンの温度設定は?
→説明書には「150℃」という指定があるが、私のアイロンには数字での温度設定が無いため、何度か試してうまくいく温度設定を見つけた。なお、木材の厚さや状態によっては、アイロンの熱で片面だけ乾燥が極度に進んで反ってしまうことがあるので注意が必要。

❸狙った位置に正確に転写するにはどうしたらよいか?
→複数色刷りの版画のように『カギ見当・引き付け見当』を用意して位置合わせをする。つまり、1箇所のカドと1辺が合っていれば全体の位置は正確になるという原理だ。

何度かのテストで要領をつかんだので実際に木材プリントしてみた。

まず、転写先の木材に正確な位置合わせのための見当をマスキングテープで用意した。そして、転写シートに反転した状態で印刷しメルトパウダーを満遍なくまぶす、この時、綿棒を使ってパウダーをそっと移動すると上手くできた。印刷部全体にパウダーが付いたら、裏から指で弾いて余分なパウダーを落としてから、木材の見当に合わせて配置し、動かないように小さなマスキングテープで仮止めした。

この状態で、一回だけアイロンを押し当てるとメルトパウダーがちょっと溶けて転写シートは固定される。このあと、連続して強い熱を与える前にマスキングテープを全て剥がしておく。

あとは説明書の手順通りに当て布をした上から様々な向きでアイロンを押し当てて、十分に転写させる。すこし冷ましてからゆっくりと転写シートを剥がして転写状態を確認する。

転写するのに使用するメルトパウダーは熱を加えると透明になるという説明だが、実際には白っぽい被膜となって木材面に残る箇所ができる。木材の色や見る角度によってはかなり目立つので除去するための何らかの処理は必要だろう。

説明書には「粘着テープ等で除去できます」と書いてあるのだが、この時に印刷部にまで粘着テープを当てると一緒に剥がれてしまうこともあるので、周囲に印刷部がない箇所では粘着テープを使えば良いが、印刷部に近いところは粘着テープではなく、#240くらいの紙ヤスリで慎重かつ丁寧に削りとった方が綺麗に仕上がった。

多少のコツと試行錯誤、器用さが必要となる商品ではあるが、木材面に転写できる数少ない選択肢として面白い商品だと思った。ちなみに、私の場合が正にそうなのだが、3枚入りの転写シート(WPDシート)だけを使い切ってしまい、メルトパウダーが沢山余ってしまった場合には、転写シートのみのばら売りもあるので、メルトパウダーを無駄に処分せずに済むのは良心的だ。

注意点として、インクジェットプリンターの場合「白」の表現は紙の色を利用しているため、木材のように白ではない表面では白表現が上手く出来ずに全体的な印象として暗くなりやすいという点、そして、アイロンで圧着する工程上、平滑面以外には綺麗に転写できないということさえ気をつければ、木材プリントを自宅で楽しめる面白いプロダクトだと云えそうだ。

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