kishin 貴真

20180125

  /  FOODS

ザ・ボタニストの魅惑

THE BOTANIST ザ・ボタニスト

昔からジンが好きだ。
一口に“ジン”と云っても、それぞれに個性があり飲み比べてみると味はかなり違っている。
10年近く前に、手に入る数十種類のジンを取り寄せて、自分が一番好きなジンはどれかグランプリ選手権大会を開催したことがある。その時の圧倒的な勝者はシーグラム(Seagram’s EXTRA DRY GIN)であった。シーグラムは、格別に私の味覚・嗅覚に合っていてその後は愛飲していた。

しかし、この銘柄は残念ながら日本に輸入代理店が無いようで、入手がどんどん困難になってしまい、ある時期から手に入れることができなくなってしまった。その流れで、ジンからも離れて、ウイスキーを楽しむようになっていた。

最近ふと、ジンが無性に恋しくなってシーグラムを探してみるも、やはり入手が困難であることに変わりはないようであったので、以前のグランプリ選手権大会には出場しなかったジンを試してみようと思い、色々と探していて目に留まったのが《THE BOTANIST》である。

アイラ島 ISLAY

英国はグラスゴーの西の海に浮かぶアイラ島(Islay)は、ウイスキー産業を基幹としており、そこにある蒸留所のひとつ、ブルイックラディ蒸留所で生産されているジンにして、アイラ島唯一のジンがTHE BOTANISTということである。

ボトルの美しさがまず目を惹く。

表面に配された文字は、アイラ島で採取された22のボタニカル名をラテン語で表記したものらしい。こうした、製品としてこだわっている要素をプロダクトデザインに取り入れる感性は明快だし好感が持てる。何より、ホワイトフリントガラスでのこの演出は、見えにくい透明な液体であるジンそのものが秘めている本質的な奥行きの深さを立体的に感じさせる演出として成功しているように思える。

THE BOTANIST ザ・ボタニスト

味わいは、複雑にして華やか。

口に含むとまず気品のある甘みが訪れ、徐々にひとつひとつの香りが花開き、やがては幾重にも重なる透明感のあるアロマが織り成す華やかな景色へと到達する。それらに雑味は一切感じられずに純粋さが際立っており、蒸留の巧みさと調合の完全なるバランスの良さがこのジンを優雅にして華麗なものとして高いレベルに昇華させている。“THE”を冠するのも伊達ではなく、ボタニカルを見事なまでに制することで生み出された素晴らしいジンであると感じた。

芸術とは何か、その定義において私は“魂を豊かにしてくれるもの”としているが、それが正しいのなら、このTHE BOTANISTの味わいは芸術の域に達していると云っても良いだろう。

一日の終わりに、磨き抜かれた透明なジンを静かに口に含む、その瞬間、ありふれた日常のひと時は豊かな時間へと変貌し、澄み渡った心地よさで感性を解き放ってくれる。

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