kishin 貴真

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20161116

/ART

見つめるMask 銅版画

森本由貴子 銅版画展 Mask へんしんのすすめ

スカッと天気が良いこんな日にはふらりと出かけたくなる。

近場のいくつかのギャラリーで個展が催されているので見に行くことにする。
はじめに gallery718 の個展を観てから、久しぶりに平和記念公園を横切って Lapis Gallery へ。

市街地からは少々外れた場所に建つどうということもないビルの3階に隠れるように存在しているこのギャラリーでは、開催の頻度は多くないものの、雰囲気のある作品を紹介する個展が度々催されている。

今回は森本由貴子氏の銅版画展《Mask へんしんのすすめ》。
神戸で活動されている銅版画家だそうだが、以前、Lapis Gallery で個展を開いた際に好評だったということで、再度の開催となったそうだ。

マスクと子供。
そのテーマからは、可愛らしく明るく楽しい雰囲気を想像しがちだが、そう単純にはいかなかった。ファンタジックで夢想的でありながらもどこかシニカルな雰囲気が漂い、ただ「可愛らしいなぁ」と見る訳にはいかないマスクをつけた子供たちの静かな視線が、大人の世界の裏側の部分をも見透かしているような、そんな怖さも感じる銅版画作品に出会える興味深い個展となっていた。

森本由貴子 Mask 5

《mask ⑤》 猫らしきマスクの眼に射抜かれて、この作品を購入した。
帰宅後にちょっと調べてみたら、まさにこの作品を刷っている作業風景を映した動画が公開されていたので興味がある方は見てみてほしい。

希少性という点では、一枚の原板から複数枚を刷ることのできる版画は、油彩画などのような一点物に比べると単品としての価値は落ちるのだが、「複数枚作成できる」と云ってもやはり完璧に同じものをコピーできるデジタルデータとは異なり、一枚々々でインクの詰め加減や乗りが異なったり刷りの圧力が変わったりすることで、微妙に表情が違ってくるという点も版画の面白さのひとつだろう。この展でも、同じ作品でも複数の版(シート)が購入可能な状態で用意されているので、購入する際には一枚々々じっくりと見比べて自分の感性に訴えかけてくる一枚を選ぶのが良いだろう。

森本由貴子氏の銅版画。マスクが持っている心理的効果だろうか、観ていると途端に想像が膨らんでしまい眼が離せなくなる、いや離したくなくなる、そんな中毒性がある。前回の広島での展は2年前だったそうなので、また2年後あたりに新作を観せに来てくれたらいいなと期待しつつ待ってみたい。

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